ゲーテ詩集 高橋健二訳

昭和39年1月20日初版発行 昭和63年2月20日33刷発行

 

小 曲

 五月の歌

  ・・

  私はお前を愛する、

  あつい血をたぎらせて。

  お前は私に青春と

  喜びとはずむ心を与えてくれる。

  

  新しい歌と踊りに

  私のこころははずむ。

  いつまでも幸福であれ、

  お前が私を愛する限り!

 

ヴィルヘルウム・マイスターから

 立て琴ひき

  ・・

  いとおしきおとめは独りなりやと、

  恋する人の忍び寄りてうかがうごとく、

  夜となく昼となく、

  苦しみは、独りなるこの身に忍び寄る。

 

詩編

 神 性

  人間は気高くあれ、

  情けぶかくやさしくあれ!

  そのことだけが、

  我らの知っている

  一切のものと

  人間とを区別する。

 

  われら知らずして

  ただほのかに感ずる

  より高きものに幸あれ!

  人間はそのより高きものに似よ、

  人間の実際の振舞いが

  それを信じさせるようであれ。

 

  自然は

  無感覚だ。

  太陽は

  善をも悪をも照らし、

  月と星は

  罪人にもこの上ない善人にも

  同様に光り輝く。

  ・・

  永遠不変の

  大法則に従い、

  われらはみな

  われらの生存の

  環をまっとうしなければならぬ。

 

  ただ人間だけが

  不可能なことをなし得る。

  人間は区別し

  選び、且つ裁く。

  人間は瞬間を

  永遠なものにすることもできる。

 

  人間だけが、

  善人に報い、

  悪人を罰し、

  癒し、救うことができる。

  また、すべての惑いさまよえる者を、

  結びつけ役立たせる。

 

  われらはあがめる、

  不滅なものたちを。

  彼らも人間であって

  最上の人間が小さい形で

  なし、あるいは欲することを

  大きな形でなすかのように。

 

  気高い人間よ、

  情けぶがく、やさしくあれ!

  うまずたゆまず、

  益あるもの、正しきものをつくれ。

  そしてかのほのかに感ぜられた

  より高きもののひな型ともなれ!

 

 警句詩

  『格言的』から

  ・・

  誠実に君の時間を利用せよ!

  何かを理解しようと思ったら、遠くを探すな。

 

  今日と明日の間には

  長い期間が横たわっている。

  君がまだ元気なうちに

  早く処理することを学べ。

 

 『温順なクセーニェン』から

  ・・

  能あるものは、そっと黙っていよ。

  そっとしておいてもおのずから現れてくる。

  どんなに装って見ても、

  結局は、人の問題だ。

 

  恋愛と情熱とは消え去ることがあっても、

  好意は永久に勝利を告げるだろう。

・・

生活をもてあそぶものは、

決して正しいものにはなれない。

自分を命令しないものは、

  いつになっても、しもべにとどまる

  ・・ 

  学問と芸術を持っているものは、

  同時に宗教を持っている。

  学問と芸術を持たぬものは、

  宗教を持て!

  ・・

  勇気を失ったのはーすべてを失ったことだ!

  そのくらいなら、生まれなかった方がいいだろう。

 

ゲーテは、深い。