定本 虚子百句 稲畑汀子

平成21年3月30日初版発行

 

高浜虚子の孫。昭和54年、父の死に伴い「ホトトギス」主宰となる。同62年、日本伝統俳句協会を設立し会長に就任。

 

あとがきによると、虚子の特徴は第1にアニミズム的な目を持っていること、第2に強烈な自我意識にある、。この2つの間に揺れながら虚子は奔放に俳句を作った、『七百五十句』では自我を脱ぎ捨てた、永久に極楽に住むこともできるのだと言っているようだ、とのこと。

 

好き勝手に私の気にいった句を書き出してみた。いうまでもないが、どれも素晴らしい。

 

春風や闘志いだきて丘に立つ   『五百句』

金亀子擲つ闇の深さかな     『五百句』

遠山に日の当りたる枯野かな   『五百句』

草摘みし今日の野いたみ夜雨来る 『五百句』

白牡丹といふといへども紅ほのか 『五百句』

桐一葉日当りながら落ちにけり  『五百句』

大空に伸び傾ける冬木かな    『五百句』

 

咲き満ちてこぼるる花もなかりけり「五百句時代」

 

椀ほどの竹生島見え秋日和    『五百五十句』

静さに耐へずして降る落ち葉かな 『五百五十句』

 「静かさに耐えきれないかのように葉が落ちた」と擬人化して読んではならない

たとふれば独楽のはぢける如くなり『五百五十句』 河東碧梧桐への追悼句

 

帚木に影というものありにけり  『句日記』

 

敵といふもの今は無し秋の月   『六百句』 昭和22年8月22日、虚子70歳の作

 

海女とても陸(くが)こそよけれ桃の花 『六百五十句』

 

羽子つこか手毬つかかともてなしぬ 『七百五十句』

たぐひなき菊の契りとことほぎぬ  『七百五十句』

傷一つ翳一つなき初御空      『七百五十句』

独り句の推敲をして遅き日を    『七百五十句』 虚子85歳の作、絶句