第163回芥川賞受賞作 首里の馬 高山羽根子

 沖縄を舞台に、資料館で保存作業の仕事をしながら、オンラインで遠方の人とクイズを出す、そんな主人公の家に、ある日、宮古馬が迷い込む。馬が話の半ばになってようやく登場するので、この馬が中心になって、以降、話が進むと思いきや、本州の馬とは違って小さい。その後、資料館は閉鎖となり、これまでのデータを保存し、オンラインでやり取りしていた人にデータを渡し、また馬の首にはウェブカメラがぶらさがり、また眼鏡の形をしたカメラをかけながらに主人公が乗って沖縄の街中を歩いて話は終わっていく。

 なんかファンタジーのような、掴み処のない小説。どう理解したらいいのか、よくわからないけれども、読後にやたらと「沖縄」「記録」「宮古馬」という舞台設定が頭にこびり付いていて、なんだか夢に出てきそうです。不思議な世界に読者を誘う小説でした。芥川賞の受賞理由は私にはよくわかりませんでしたが、言葉にうまくできない何かを読者に感じさせ、また考えさせるという意味では、ちょっとした成功を収めているのかもしれません。