ヴェニスの商人 ウィリアム・シェイクスピア 原作 小田島雄志 文

2016年9月初版第1刷発行

 

シェイクスピア31歳頃の作品(1596-7年)。中1の時に読んだ以来。巻末の解説には、ユダヤ人への憎悪に満ちた対立、アントニーとバッサーニオの男の友情、バッサーニオとポーシャの自分の意志による近代的な愛、ジェシカとロレンゾの駆け落ち、箱選びというお伽話、男装ポーシャの知的ゲームなど、あらゆる要素をごった煮の鍋に放り込んだような喜劇とあったが、本当にその通りだと思います。中1の私にはポーシャ裁判官の名セリフだけが肺腑を抉ったのですが、それ以外にも様々な要素が盛り込まれているという新たな気づきが今回読み直してありました。

ちなみに、男装した裁判官ポーシャは、事件解決後、バッサーニオから愛の印の指輪を差し出させ、書記官役をしたネリッサはグラシアーノーからも指輪をせしめて、その後で素知らぬ顔をして現れた二人がこの男性二人にそれぞれどうして指輪がないのかと詰め寄るシーンは世の男性を震え上がら得る名シーンですね。喜劇そのものです。そこに問題の発端を作ったアントーニオが「魂を抵当に入れて誓います。ご主人は二度と故意に誓いを破りはしない」と二人の女性に誓ったところで、二人の女性は矛を収めた、となるのですが、げに女性は恐ろしいですね。。。それにしてもユダヤ人への人種差別的視点がこの作品にはずいぶん深刻な影を落としています。中学生の頃はそんなことを意識していませんでしたが、読み直してみると、この問題が一番根底の問題としてあるように思います。