C・S・ルイス「ナルニア国」への扉  ビアトリス・ゴームリ― 奥田実紀訳

2006年4月初版第1刷発行 2007年7月第2刷発行

 

9歳で母を失ったルイスは兄ウォレンとは大の仲良しだった。無神論者だったルイスは16歳のときキリスト教徒になる。ギリシア語とラテン語に加え、カークパトリック先生からはイタリア語を学び、夫人からはフランス語を習った。オックスフォード大学の奨学生受験準備に入ったルイスは、詩人になりたかった。18歳で軍隊生活を送る中でムーア夫人に大変世話になった。オックスフォード大学モードリン校の特別研究員に選ばれると詩作を続けた。オックスフォードでは、カトリック教徒で『指輪物語』の作者であるトールキンと親交を深める。それまで形だけのキリスト教徒で実質無神論者だったルイスは30歳で神を受け入れる。その秋から毎週日曜日に教会に行き、聖書も読み始めた。兄をオックスフォードに連れ帰り再び親密になる。32歳でイエス・キリストを神の子と信じ、本当のキリスト教徒となる。キルンズに家を求め、兄、ムーア一家と一緒に暮らす。トールキンの『ホビットの冒険』を読んで興奮したルイスは『愛とアレゴリー(たとえ話)』、SF小説『沈黙の惑星を離れて』などを書き上げた。ルイスは真のキリスト教徒になり自分の豊かな想像力をキリスト教の信仰を深めるために使えることに気付いた。こうしてルイスの想像力は本当に洗礼を受けた、つまり清められたのである。第二次大戦が始まるとルイスはラジオ講演を受け持った。のちに『キリスト教の精髄』という題にまとめられた。戦後、ルイスはナルニア国の物語をシリーズとして書き始める。

ナルニア国物語キリスト教の正しい教えを子供たちに伝えるために書かれたと思っている人が多いが、ルイスはそういう意図はまったくなかったし、道徳を教えるために物語を書くなんて間違っていると述べている。ルイスの作品は手紙のようである。

ルイスは最後の本『マルコムへの手紙~祈りについて~(邦題「神と人間との対話」)』で魂の復活について「かつていた世界と同じだがまったく同じではない新しい景色と空が、イエス・キリストをそばに感じたときのように目の前に広がり、長い沈黙と暗闇ののち、ふたたび鳥がうたい、水が流れ、光と影が丘陵を横切り、知っている友人たちが笑いながら、驚きのあいさつをかけてくれる」とかいた。想像の天国〈アスランの国〉のことである。ケネディが暗殺された1963年11月22日、65歳の生涯を終える。