知らないと恥をかく世界の大問題9 分断を生み出す一強政治 池上彰

2018年6月10日初版発行

 

 最初の数十頁で、トランプ政権の驚くべき内幕を暴いた『炎と怒り』(早川書房・原書『FIRE AND FURY』100万部を超えるベストセラー、トランプの右腕だったスティーブ・バノン元首席戦略官の証言等をもとに書かれた本)をコンパクトに紹介しているが、その内容は衝撃的。トランプ本人も全く大統領選挙に勝てるとは思っていなかったというのも驚きだったが(負けても不動産の仕事に生きると思って大統領選に出馬したと分析している)、トランプという人は1冊を通して本を読み通すこともなく、大統領になった後はマックを食べ続け(毒殺を避けるため)、ホワイトハウスの執務室には午後から入り、情報はテレビから収集し、外交はそれまで全く勉強してこなかったから、外交音痴の政策を次々と発表し、前大統領のオバマ政権の実績を覆すことをやり続けた、トランプ・ファースト(アメリカ・ファーストにすらなっていない)という政権の実態が紹介されている。こんな人を大統領に選んだということを本当にアメリカ国民は理解していたのだろうか?

 次に衝撃を受けたのは、世界各国で徴兵制が次々と復活するか復活する流れが出来ているということ。プーチンによるロシアの飛び地カリーニングラードでイスカンデル(核弾頭搭載可能な弾道ミサイル)配備を警戒してスウェーデンは2010年に廃止した徴兵制を2018年1月に復活させた。フランスのマクロン大統領も2018年に入り2001年に廃止した徴兵制復活の考えを示す。ドイツの野党第一党も徴兵制復活を公約に掲げるまでに。

サウジアラビアとは「サウド家のアラビア」という意味で、国全体がサウド家の持ち物で、サウド家がすべての権力を掌握する絶対王国。未だに毎週金曜日の集団礼拝の跡に公園で公開処刑が行われている。これも知らなかった。。恐ろしい国だ。

 池上氏はベトナムに訪れた際に本屋があちこちあって若い人達が大勢本を読んでいる姿を見て、ベトナムはこれからまだまだ発展すると思ったそうだ。日本も戦後は電車の中で皆本を読んでいたのに今はスマホでゲームばかり、残念な気がしてならないと嘆いているが、確かにその通りかも。