世界史の大転換 常識が通じない時代の読み方 佐藤優/宮家邦彦

2016年6月29日第1版第1刷

 

跋扈するIS、誰も予期できなかったトランプ現象、止まらない中国の軍拡…「歴史の終わり」どころか想定外の出来事が次々に起こる世界。その本質を理解するにはニュースの表層を追いかけるだけでなく、背後の因果・相関関係を見抜く本物の歴史的大局観が必要だ。本書では国際社会の表裏を知り尽くした二人のプロフェッショナルが、中東、中央アジア、欧州、アメリカ、中国とまさに地球を一周しながら、なぜいま世界史的な大転換期が到来しているのか、そこでとるべき日本の生き残り策は何かを鮮やかに解き明かす。世界情勢の核心が丸ごと理解できる、圧倒的な密度の一冊。

 

目次

第1章 ポスト冷戦の終わり、甦るナショナリズム

第2章 ISを排除しても中東情勢は安定しない

第3章 中央アジアは「第四次グレートゲーム」の主戦場

第4章 「国境のない欧州」という理想はテロで崩れるか

第5章 トランプ現象に襲われたアメリカの光と闇

第6章 中国こそが「戦後レジームへの挑戦者」だ

終章 「ダークサイド」に墜ちるなかれ、日本

 

・なぜロシアがアサド政権を応援するのか。アサド政権が倒れると化学兵器やミサイルの管理ができなくなりシリアの紛争がレバノンイスラエル北部に拡大し、その混乱に乗じてアルカイーダ系イスラム過激派がシリアに拠点を設ける。そうするとシリア在住のチェチェン人、チェルケス人などを通じてその悪影響がロシア北のコーカサスに及ぶ。再びチェチェン紛争のような事態が発生することを防ぐ狙いがある。

・トルコとロシアは因縁浅からぬ関係。過去500年で12回戦争している。

サウジアラビアはロシアを利用可能なカードと見なしている。

・現在はアラブ・ナショナリズム衰退の最終過程であり、古い秩序が崩れつつ新たな秩序構築が同時進行している。

 

・ISの新たなジハード拡散の拠点はフェルガナ盆地。

中央アジアスターリンが無理やり国境線を引いて民族を分割して出来た。

中央アジアの場合は、人工的に造られた民族のアイデンティティが年月を経過したことで比較的安定しており、そこは中東との差異。

・中国は中央アジアイスラム主義についてどう働きかけたらいいか分からない状態。

・2015年7月14日、核協議でイランと国連安保理常任理事国など6か国(米英仏独中露)が最終合意に達したが、これはイラン外交の大勝利。これで経済制裁が解除されればイランの財政は大幅に改善する。アメリカの歴史的誤算といってもいい(宮家)。

アメリカの中東関与の動機はエネルギーの安定確保ではない。もともとアメリカは中東原油依存は2割程度しかない。その理由は同地域の不安定化が、欧州、アジアの同盟国とイスラエルに及ぼす悪影響を懸念するから。

 

中東、中央アジアについては、知識が不十分だったので、大変ためになった。わかりやすいのが、とても良い。