危ない読書 教養の幅を広げる「悪書」のすすめ 佐藤優

2021年9月15日初版第1刷発行

 

裏表紙「“知の巨人”佐藤優がおすすめする危険で刺激的な悪書の数々 本書では、ヒトラー金正恩などの独裁者の自伝や、革マル派リーダーの獄中記、元銀行員による経済犯罪の記録など、20冊の『悪書』を紹介する。いずれも日本における社会的常識や倫理観に反する危険な本である。このような自分の価値観とは異なる本、生理的に受け容れがたい本を読んでこそ、深い教養と高い視座が手に入る。国家の裏側と人間の闇を知り尽くす佐藤優が案内する、善悪を超えた知的読書の世界とは。」

 

第1章 独裁者の哲学 彼らはいかにして人を操ったのか?

    『わが闘争』アドルフ・ヒトラー

      アメリカの研究者ティモシー・ライバック『ヒトラーの秘密図書館』は、ヒトラー保有の蔵書をアメリカが押収し、分析した本。本の結論は、「ヒトラーの思想はある日突然考えたことではなく、様々な本を読み漁り、彼なりに再編成されたものである」。

      著者は、フィルターバブルの先にあるサイバーカスケード現象の危険に直面する現代人にもヒトラーと同じ過ちを犯す危険を見出す。

    『レーニン主義の基礎』スターリン

      頭はロシア的、手足はアメリカ的であれと言っている、と要約。

『書物主義に反対する』毛沢東

  調査なくして発言なしという毛沢東は経営者としては三流だがコンサルとしては一流、と指摘。

金正恩著作集』

『国体の本義』文部省教学局

第2章 過激派の知略 彼らはなぜ暴力を用いたのか?

    『戦争論クラウゼヴィッツカール・シュミット『政治的なものの概念』も俊逸

『クーデターの技術』クルツィオ・マラパルテ クーデターは技術である、と指摘。

プロパガンダ戦史』池田徳眞

『読書のしかた』黒田寛一 革マル派リーダーによる超実践的読書術

 日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派。略して革マル派

パルタイ倉橋由美子 パルタイとは党のドイツ語で日本共産党のこと。

第3章 成功者の本性 彼らは何のために富を得たのか?

    『カルロス・ゴーン経営を語る』カルロス・ゴーン/フィリップ・リエス

『トランプ自伝 不動産王にビジネスを学ぶ』ドナルド・トランプ/トニー・シュウォーツ 人は自分では大きく考えないかもしれないが、大きく考える人を見ると興奮する。だからある程度の誇張は望ましい。これ以上大きく、豪華で、素晴らしいものはない、と人びとは思いたいのだ。私はこれを真実の誇張と呼ぶ。これは罪のないホラであり、きわめて効果的な宣伝方法である。

 トランプは根っからの不動産屋であり戦争嫌いだ。クリントンが大統領に選ばれていたらアメリカは朝鮮半島にミサイルを撃ち込んでいたはずだ。朝鮮半島で有事になると日本は直ちにホワイトビーチ、嘉手納、普天間佐世保、横田、座間を国連軍に提供しロジステックサポートを行わないといけないと朝鮮国連軍地位協定に書いてある。

『告白』井口俊英 大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件の当事者の獄中手記。

『ゼロ』堀江貴文 著者と堀江氏の共通点は百科事典読み。

『死ぬこと以外かすり傷』箕輪厚介

第4章 異端者の独白 彼らはタブーを犯して何を見たのか?

    『わが闘争・猥褻罪―捜索逮捕歴31回』大坪利夫 「大人のオモチャ」の考案者

『突破者―戦後史の陰を駆け抜けた50年』宮崎学

邪宗門高橋和巳 下巻27章「三日天下」以降だけでも読んでみるとよい、と。

カラマーゾフの兄弟』ドフトエフスキー 「蜘蛛の糸」はカラマーゾフの兄弟から拝借した作品

『地球星人』村田紗耶香 毒が毒のままの文学作品。なぜ気持ち悪いと感じるのか考えてほしい。

おわりに 抵抗力を高めるワクチンの役目を果たす「悪書」のすすめ論、のようである。