2021年6月20日第1刷発行
帯封「『左翼』は何を達成し、なぜ失敗したのか。忘れられた近現代史を検証する。戦後左派の巨人たち、武装闘争の幕開け、野党の躍進と五十五年体制」「左翼の歴史は日本の近現代史そのものである。本書の内容 ◇日本共産党の本質は今も『革命政党』 ◇社会党の栄光と凋落の背景 ◇社会主義が支持を集めるアメリカの現状 ◇野坂参三『愛される共産党』の意図」 ◇宮本顕治はなぜ非転向を貫けたか ◇労農派・向坂逸郎の『抵抗の方法論』 ◇テロが歴史を変えた『風流夢譚』事件 ◇『共産党的弁証法』という欺瞞 ◇労働歌と軍歌の奇妙な共通点 ◇共産党の分裂を招いた『所感派』と『国際派』 ◇毛沢東を模倣した『山村工作隊』 ◇知識人を驚愕させた『スターリン批判』 ◇天才兄弟と称された上田浩一郎と不破哲郎 ◇黒田寛一と『人間革命』の共通点 ◇現在の社民党は『右翼社民』
共産党が暴力革命の旗を今もって降ろしていないことがよくわかる一書です。
そもそも本来の左翼・右翼の意味と、現在使われている左翼・右翼の意味が全く異なることを教えてくれている。現代の世界史を俯瞰して社会主義の復活の兆しを感じ取っている佐藤氏はだからこそ左の教養を学んでおく必要があると説く(18P)。
原水協と原水禁がなぜ対立しているのかも簡潔にわかりやすく説明(26P)。
共産党は革命政党の旗を降ろしていないからこそ、今も破壊発動防止法の対象に該当するか否かの調査と処分請求を行うための機関として公安調査庁を作って監視されている(36p)。
『菊と刀』は日系アメリカ共産党員のヒアリングで著わされたもので共産史観(53P)。
「講座派」(日本資本主義発達講座執筆者中心)は共産党、「労農派」(政治雑誌執筆者中心)は社会党の理論的支柱に(56p)。
野坂参三については英雄扱いから党除名処分まで評価が真反対に(63~64P)。
共産党は憲法審議の際に9条に反対。資本主義人陣営と戦争する事態を念頭に置いていた(104p)。
「所感派」(コミンフォルムの指示に従わない)と「国際派」(その指示に従うべきだ)の対立を機にレッドパージが断行され、再統一の下で武装闘争路線が放棄(国際派が主流に126p)。
論文「極左日和見主義者の中傷と挑発」は中央委員会出版局『日本共産党重要論文』第五巻(1988年初版刊行)に収録されており、同論文には「敵の出方によっては暴力革命を行う」と書いてある(136P)。
不破哲三『現代政治と科学的社会主義』(新日本出版1968年)は二四四頁で平和革命論を日和見主義とこき下ろしている(137P)。
トランプがやろうとした外交政策は「新アチソンライン」(朝鮮半島の安全保障は北朝鮮と韓国に任せる。日本列島、琉球弧、フィリピンに台湾を新たに加えて防衛線として示す。148P)。
右派社会党と左派社会党が合流して日本社会党に統一し、自由党と民主党が合流して自民党が結成され、ここに55年体制が出来上がる(157P)。
五五年体制は共産党も六全協で今に至る体制となり、それにより新左翼が生まれ、黒田寛一が「革マル派」、本多延嘉が「中核派」を名乗るようになった(194~195P)。
社会党のど真ん中に社会主義協会があり、その左に新左翼がいるという独特な構造を持つ(196P)。
社会党の非武装中立論はあくまで条件付きの非武装中立だったが、あまり理解されていない。社会主義革命を共に推進する同盟国となるはずのソ連を守り、アメリカ帝国主義と戦うための軍隊を持つべきであると考えていた(206P)。