2005年3月25日初版発行 2007年5月30日3刷発行
裏表紙「韓非子は、法による厳格な支配を主張する法家思想の大成者。君主の君主による君主のための支配を目指すには、法・術・勢という三つの技術が必要だと説き、秦の始皇帝に『この作品の作者に会って話し合えるならば死んでもかまわない』とまで言わせた思想は、現代にも通じる冷静ですぐれた政治思想である。韓非子自身の鋭い人間観察による社会観・世界観を『矛盾』『株を守る』などの分かりやすいエピソードとともに語る」
はじめに
解説―韓非子の思想と生涯
第1章 孤独な思想家―法術の士
説難篇 孤憤篇 問田篇
「凡そ説くことの難きは、説く所の心を知り、吾が説を以て之に当つべきに在り」
「智術の士、必ず遠く見て明察す。明察せずんば私を燭す能わず」
「法術を立て度数を設くるは、民萌を利し衆庶に便する所以の道なり」
第2章 支配の技術―「法」と「術」と「勢」
定法篇 術は君子のみがひそかに用いるべきものである。
二柄篇 利と威というアメとムチの両方を君主自身が使い分けるのが「術」の秘訣 法家の形名参同、儒家の正名思想、墨家の名実一致は同じ
難勢篇 矛盾と同様に「賢勢の相容れざること亦明らかなり」
第3章 人間の分析―人間観と世界観―
備内篇 妻子に対し警戒し備えること。君主の備えは的確な「術」と厳格な「法」の運用以外にはなく、韓非の「利」の人間観は道徳の問題を取り除いてしまった。
外儲説(がいちょぜい)左上 五蠧(ごと)篇 大体篇
生活水準の差とその推移という考え方は人口論とともに、韓非の歴史観の基礎になっている。韓非は君主の恣意を道徳により取り締まるのではなく道家の道によった。
マキャベリズム(権謀術数)と韓非子(法家)とはよく同列に扱われるが、韓非子の方を知るには大変よく出来た入門書だと思う。