昭和21年9月20日第1刷発行 昭和41年3月16日第35刷改版発行 昭和41年9月10日第36刷発行
1〔空想的社会主義〕
〔社会主義は思想である。〕
〔フランス革命は理性の革命であった。〕
〔その革命の限界。〕
〔ブルジョア革命はそのうちにプロレタリア革命をふくんでいた〕
〔彼らが空想的であったのは社会的地盤がなかったからだ。〕
〔革命は理性どおりにはいかない。〕
〔なぜ理性が無力であったのか。〕
〔社会的地盤のない理性は実現しない。〕
〔サン・シモンの社会主義。〕
〔サン・シモンの思想は雄大で革命的であった。〕
〔フーリエは革命の、そしてそれがもたらした文明の偉大な批評家である。〕
〔彼はその実践を通じて社会主義者となった。〕
〔オーウェンの計画は立派であった。〕
〔空想より科学へ。〕
本文の小見出しを追っかけるだけで、何が言いたいのか、大体、わかるように記述されている。要するに、フランス革命は理性の革命であったため、社会的な基礎なくして理性は実現しないから失敗した。その結果、フランス革命は、労働者を搾取するブルジョワジー革命を実現させた。これに対し、サン=シモン、フーリエ、オーウェンの3人が、プロレタリア階級の利害を代表するかわりに社会主義を試みたが、彼らはユートピア(空想)を思い描く空想家だった、というもの。
本文の末尾は、
「これら空想家の考え方は十九世紀の社会主義思想を久しいあいだ支配し、部分的には今もなお支配している」とし、「社会主義を一つの科学とするためには、まずもって、それを現実の地盤の上にすえねばならない」と結んでいる。
〔弁証法の歴史。〕
〔形而上学的考え方の限界と誤謬。〕
〔自然は弁証法の検証である。〕
〔カントがその星雲説でまず弁証法を検証した。〕
〔社会の歴史も、はやくも弁証法的発展があった。〕
〔一切の歴史は階級闘争の歴史である。〕
ヘーゲルが弁証法を完成させたが、観念的であり、一切のものは逆立ちさせられ、ヘーゲルの歴史観の代わりに近代唯物論・唯物史観が登場し、ここに階級闘争の歴史観が必然的に生まれた、というもの。
本文は「唯物史観と、剰余価値による資本主義的生産の秘密の暴露とは、われわれがマルクスに負うところである。社会主義はこの発見によって一つの科学となった」という結び方となっている。
3〔資本主義の発展〕
〔唯物史観は社会革命の手段を生産関係のうちに見る。〕
〔資本制生産関係の中で生産方法と生産力が衝突した。〕
〔この衝突の原因(一)生産方法の社会化。〕
〔(二)所有(取得)の個人性。〕
〔右の(一)と(二)とが資本主義生産の基本的矛盾である。〕
〔プロレタリアートの出現。〕
〔市場における商品の法則が生産者を規制する。〕
〔商品は小生産者の間に出現した。〕
〔資本主義生産方法とともに商品の法則が支配的となった。〕
〔産業予備軍の法則、『窮乏化の法則』。〕
〔生産力の拡大と市場の拡大とが矛盾する。〕
〔それを調整すべく恐慌はくり返される。〕
〔恐慌とは生産方法の交換方法に対する叛逆である。〕
〔恐慌は生産力から資本たる性質を解放することを求める。〕
〔それはまず資本の独占-トラストとなる。〕
〔トラストはいつまでもゆるされない。〕
〔重要産業の国有化はすでに行なわれている。〕
〔資本家もまたその社会的機能を失う。〕
〔産業国有ではそれは解決しない。〕
〔解決は生産方法の社会的性質の承認にある。〕
〔われわれが生産力を支配することができる。〕
〔国家の廃止と死滅。〕
〔いまや社会主義は歴史的必然である。〕
〔その基礎は階級の分裂である。〕
〔社会主義とは計画生産である。〕
重要な本文を引用すると、
「社会的に生産されることになった生産物を取得する人は、生産手段を現実に動かし、生産物を現実に生産する人ではなくて、資本家であった」
「この矛盾の内に現代の一切の衝突の萌芽が含まれている」
「機械は、労働者階級に対する資本の最も有力な武器となる」
「資本の蓄積があればそれに照応して貧困の蓄積がある」
これにより衝突が周期的になり悪循環・恐慌が繰り返され、資本家の国家はますます国民を搾取する。
「階級支配と従来の生産の無政府状態に立脚する個人の生存競争がなくなってしまえば、そしてこれから生ずる衝突と逸脱とがなくなってしまえば、抑圧しなくてはならぬものはないのである、特殊な抑圧権力たる国家は必要でない」「国家は「廃止」(“abschaffen”)されるのではない、死滅する(absterben)のである。」
ゆえに、社会主義は歴史的必然と結論づける。
共産党宣言も、論理一貫した書物だが、こちらも負けず劣らず論理一貫した書物である。