昭和史の人間学 半藤一利

2023年1月20日第1刷発行

 

帯封「歴史家・半藤の白眉は人物評にある。石原莞爾、阿南惟畿、井上成美、山本五十六東条英機辻政信永野修身、栗田健男、マッカーサーチャーチルヒトラーなど計66人を評価!」

表紙裏「永田鉄山石原莞爾今村均山下奉文栗林忠道阿南惟幾マッカーサー、米内光政、井上成美、山本五十六伊藤整一、東條英機辻政信牟田口廉也伏見宮博恭王、栗田健男、大西瀧次郎、近衛文麿鈴木貫太郎チャーチルヒトラースターリンなど計66人が登場!」

 

目次

はじめに

第一章 卓抜な軍人たち 陸軍篇  

    「名将」の条件 第1に決断を自分で下すことができた人。第2に任務の目的を部下に明確に伝えられる人。第3に情報を自らの目や耳で掴む人。第4に過去の成功体験にとらわれない人。第5に常に焦点の場所に身を置いた人。最後に部下に最大限の任務の遂行を求められる人。

永田鉄山 陸軍八十年の歴史で一、二に指を屈する大秀才 

石原莞爾 昭和陸軍最高の天才にして満洲事変の首謀者 

板垣征四郎石原莞爾 満洲事変を演出した片や胆力、片や知謀のコンビ

今村均 戦犯裁判で裁判官までが味方した陸軍最高の人格者

山下奉文 世界を驚嘆せしめた“マレーの虎

山下奉文武藤章 〝敗軍の将〟と決し責任を死で償った将軍

■中川州男 米軍を苦しめ続けたペリリュー島の雄 

栗林忠道 硫黄島で孤軍奮闘した英雄 

宮崎繁三郎 連戦連勝の猛将にして温情の将軍 

阿南惟幾 最後まで陸相の責を務めて切腹した天皇の忠臣 大陸軍の歴史のうちのもっとも偉大にして崇高な任務を遂げた 最後のどんづまりになって、一番の適役だった総率者 阿南の遺言「米内を斬れ」の意味するもの

【米国軍人篇】

ダグラス・マッカーサー 日本人を知り尽くした戦略の天才

 

第二章 卓抜な軍人たち 海軍篇  

■米内光政 日本を終戦に導いた昭和海軍の救い手 海軍“良識派三羽ガラス”の筆頭 

■井上成美 大局観に優れた一徹者 「三国同盟に反対ということでは、井上が一番」 「陸軍が脱線する限り、国を救うものは海軍より他にない」

山本五十六 先が見えすぎた悲劇の連合艦隊司令長官 零戦酸素魚雷、中型攻撃機の三点セット 米国が断じた「騙し討ち」に誰よりも心を暗くした 二十世紀を最初に実感した数少ない日本人 理想のリーダーに必要な六つの条件(①自分自身で決断すること②部下に明確な目標を与えること、3つ目以下は?) 世界を驚かせたガダルカナル島撤退作戦 自分が責任を持てないことを命令してはいかん 大艦巨砲から航空機への転換の先見的な視点

■堀悌吉 海軍始まって以来の英才 

■小沢治三郎 魚雷で世界を震撼させた司令長官 

■田中頼三 アメリ巡洋艦隊を壊滅させた闘将 

木村昌福 キスカ島から無血撤退を成功させた猛将 

伊藤整一 戦艦「大和」と心中した司令長官 

【米国軍人篇】

■アーネスト・キング 人材登用に長けた最高指揮官 

 

第三章 残念な軍人たち 陸軍篇  

■本庄繁 陸軍をダメにした先駆者 「バレずにうまくやればいい」という教訓を残した

東條英機 昭和陸軍の矛盾が集約された最高責任者 「戦陣訓」は完全にお芝居です

東條英機嶋田繁太郎(海軍) 片や傲慢、片や優柔不断、最悪のトップコンビ 

 統帥部の総長を兼任するという前代未聞の非常手段

■服部卓四郎/辻政信 膨大な数の日本兵を無駄死にさせた最悪のコンビ 服部は石原莞爾を超えようとして辻を起用した ノモンハン事件は日本の敗戦につながる大きな転換点 勲章を欲しいがための暴走 二人が日本を太平洋戦争に導いた

■服部卓四郎 デマを流して部内工作をする策士 北にこりて南へ南へと思考を転回

辻政信 反省の「は」の字もない大噓つき 身体に入っている弾丸は、四か国から七か国に 戦後は国会議員として国家の中枢で大手を振って歩いた

牟田口廉也 日中戦争を起こしインパール作戦を指揮した無責任の代表格 

杉山元 天皇の信頼薄い〝三等重役〟 

瀬島龍三 シベリア抑留について死ぬまで明かさなかった大本営参謀 「お前なんかが言う筋合いではない」 陸軍参謀のあと、戦後は国の参謀として活躍

 

第四章 残念な軍人たち 海軍篇  

■末次信正 「統帥権干犯」問題の仕掛け人 

伏見宮博恭王 半藤が海軍でもっとも責任が重いと断ずる皇族軍人 親独派で日米開戦論者だった皇族総長には誰も逆らえなかった 特攻作戦へと踏み切らせた張本人

■及川古志郎 対英米開戦路線を進めた無責任男 問われても「総理一任」というばかり 

嶋田繁太郎 艦長に艦とともに死ぬことを強いた東條の男メカケ 「艦長は艦と運命をともにすべし」という訓示 開戦論者である伏見宮にコロリとなびいた 「嶋ハンは東條の男メカケだ」

■石川信吾 対米戦に突き進んだ危険極まりない人物 まさしく昭和海軍が生んだ不規弾

永野修身 陸軍と競って主戦論をぶちあげた「グッタリ大将」 天皇に対してもふてぶてしい海軍の最高責任者 「国家百年の計のために、よろしく開戦を決心すべきであります」 「グッタリ」なのは、若くて美人の後妻をもらったため 「戦機は後には来ない。今がチャンスだ」

■栗田健男 戦意乏しくあらぬ方向へ走る弱腰の提督 

■源田実 優秀なれど危険な人物 

 

第五章 その他の軍人たち 陸軍篇  

宇垣一成 勝ち馬に乗る処世術の士 

荒木貞夫 皇道派頭目に祭り上げられた軍国主義者 

■下村定 責任を率直に認めた最後の陸軍大臣 

■朝枝繁春 終戦時に大本営にいた参謀 

■吉松喜三 戦中戦後に中国で四百万本の苗木を植えた「緑の連隊長」 

三波春夫 「お客様は神様です」で知られるシベリア抑留兵 

加東大介 激戦地で劇を演じ続けた軍曹 

 

第六章 その他の軍人たち 海軍篇  

大西瀧治郎 「特攻の生みの親」という汚名を着せられた海軍中将 大西中将の真意は、戦争をやめさせるために特攻に踏み切った

■田辺弥八/長谷川稔 米艦に致命傷を与えた二人の潜水艦長 

■玉井浅一 戦後、坊さんになった特攻の指揮官 

■吉見信一 戦後、医者になった司令官 51歳で慶応医学部を受験

 

第七章 政治家と官僚たち

石橋湛山 軍部ともGHQとも対立した気骨の人 小国主義を提示した数少ない知識人

田中義一 天皇の不興を買った首相 天皇へのウソを見破られ叱責される

西園寺公望 昭和期で唯一の元老 二・二六事件で気力を失った

高橋是清 世界恐慌後の日本を救った名蔵相 高橋・井上コンビの実に鮮やかなさばき 予算をめぐって陸海軍と戦い続けた

近衛文麿 恐れも洞察も責任も希薄な指導者 近衛は普遍的な理念を提示できなかった 問題が紛糾してくると、愛人宅に逃げた 近衛が国家ナショナリズム一色へと変えていった 日独伊三国連盟を結び戦争への坂道を転げ落ちた 「戦争の根本責任を負う者は、東條大将と近衛公爵」(斎藤隆夫

松岡洋右 たった一人で政府を引っかき回した外務大臣 「四国協定で臨めば英米と対等にやりあえる」

木戸幸一 天皇の決定すらも左右できた側近中の側近 木戸の天皇独占、これだけは許せない 木戸の証言は東京裁判に相当の影響を与えた

鈴木貫太郎 終戦を決定づけた満身創痍の名宰相 天皇とのア・ウンの呼吸で終戦に導いた

南原繁 和平への道を必死に工作した東大教授 「ソビエトを仲介とする和平は絶対にやってはいけない」

吉田茂 戦後日本のあり方を決めたワンマン首相 「アングロサクソンとは仲良くしなければならない」

■寺崎太郎 気骨ある官僚その① かつては身の危険を顧みない官僚が大勢いた

■下村治/大来佐武郎 気骨ある官僚その② 天皇の官吏であった人たちの日本再興への強い使命感

【海外の政治家篇】

ウィンストン・チャーチル 第二次世界大戦で国を鼓舞し続けた名宰相 

シャルル・ド・ゴール 連合国に向けて「ノン」を言い続けた将軍 

毛沢東 革命を成就したあとは尊大な独裁者 

蒋介石 アジアの代表的な反共政治家 

アドルフ・ヒトラーヨシフ・スターリン 二十世紀が生んだ悪魔たち 

ヨシフ・スターリン ひがみっぽく偏執狂的な独裁者 

 

日本の第二次大戦中の軍人に焦点を当てた半藤人物論。昭和史の人間学というと、もっと幅広い人たちを取り上げているかのように思うが、そうではない。ただ、余り知られていない軍人たちの勉強にはなりました。