2023年1月10日第1版第1刷発行
帯封「1人の死は悲劇だが、数百万人の死は統計上の数字 ソ連崩壊をスクープした記者と中国の未来を予言する評論家が激論 政権維持のために戦争を望む21世紀のスターリンと毛沢東の夢想」「第1章 スターリンになりたいプーチン-斎藤勉 第2章 毛沢東になりたい習近平-石平 第3章 野合と対立の中ロ関係史-斎藤勉×石平 第4章 ウクライナ戦争と日本の危機-斎藤勉×石平 第5章 プーチンと習近平の末路-斎藤勉×石平」
第1章
プーチンが尊敬する先人としては、ウラジミール大公(ロシアをキリスト教国に導いた指導者)、ピョートル大帝(スウェーデンとの戦争に勝利しスウェーデンから領土を奪った)、エカテリーナ2世(オスマン帝国との戦争に勝利しウクライナのほぼ東半分を獲得した)、アレクサンドル3世(ロシア人には友人はいない。ロシアには信頼できる同盟者は二つしかない。陸軍と海軍であるとの言葉が記念像に刻まれている)、スターリン、アンドロポフ(ブタペストの虐殺者)の6人。ロシア正教会トップのキリル総主教もプーチンも「ル―スキー・ミール(ロシアの世界)」=「ロシア語を話し、正教を信仰する人々は一つ屋根の下に住まなくてはならない」という哲学を信奉している。今回のウクライナ侵攻は、ロシア正教会から独立したウクライナ正教会を罰するという意味でも、欧米的規範という悪魔からウクライナのロシア正教的規範を守るという意味でも宗教戦争と思われる。
第2章
習近平は、鄧小平が個人独裁体制を終わらせるために導入した集団的指導体制も、最高指導者の定年制もいずれも破壊し、終身独裁者として事実上の皇帝になろうとしている。鄧小平の韜光養晦(とうこうようかい)戦略が奏功し力を蓄えると爪を隠す必要はもうないと判断して中華思想に基づく侵略的覇権主義路線に舵を切った。
第3章
スターリン・毛沢東の第一次中ロ蜜月時代、プーチン・習近平の第二次中ロ蜜月時代。
北朝鮮の最高指導者候補を面接したのがスターリン。スターリン・毛沢東・金日成の体制で朝鮮戦争が勃発。プーチン・習近平・金正恩は当時と同じ体制でいつ戦争が起きるか分からない。敵をナチスにしてしまえば何をやっても許されると考えるプーチンは、チェチェン独立派武装勢力によるテロ事件をデッチ上げてチェチェン紛争を巻き起こし、以来、戦争に告ぐ戦争で絶大な権力と人気を獲得していった。そんなプーチンを国際政治の先輩として尊敬している習近平(但しウクライナ戦争でこけたプーチンに対し出来の悪い弟というように意識変換した可能性がある)。だからこそ現在はとても危い。ちなみに産経新聞は北京に特派員を置けず台湾経由で情報を入手していたため、共産党独裁の体制悪を糾弾するという正論路線を維持できたことから結果的に正しい報道ができたと自負している。
第4章
ロシアの20年憲法改正では他国を侵略し領土拡大を宣言しているに等しい条文が紛れ込んでいるため、憲法上の侵略国家になったとウクライナの国際政治学者グレンコ・アンドリーは指摘している。ロシア改正憲法の発効前日に香港国家安全維持法が成立した。プーチンと習近平が示し合わせた可能性がある。ノルウェーのノーベル賞委員会は2021年にプーチン政権に批判的な論陣を張るノーヴァヤ・ガゼータ紙のウラトフ編集長に、2022年にはロシア最大の人権団体メモリアル、ウクライナでプーチンの戦争犯罪を調査・記録している市民自由センター、人権活動家ビャリッツキ氏が受賞したが、ノーベル賞委員会にノーベル賞を差し上げたいと痛快な気持になったという。
中国だけでなくロシアが尖閣周辺の接続海域に入ってきたという事態は相当に深刻。ロシアと中国が日本をターゲットに攻め入る可能性が現実味を帯びてきている。日米同盟とNATOと真ん中のインドが連携した意味は非常に大きい。プーチンにとっては大誤算。であるからこそ日本ターゲットになる危険が増している。
第5章
みずからがヒトラーになり果てたプーチンの行く先は、このままいけば中国の属国になるという選択肢しかなくなるが、誇り高いロシア人は習近平の子分になることに耐えらないから、プーチンは粛清されるしかない。解放軍東部戦区の司令官だった軍人の何衛東(かえいとう)が今回政治局委員に大抜擢されたのは台湾有事のための異例の戦時体制人選。アメリカ軍に介入の口実と隙を与えないために蔡英文をピンポイントで非戦争軍事行為という名目で暗殺する現実的危険がある。
台湾の半導体企業「TSMC」の高精密の最先端半導体なくして、戦闘機もミサイルもドローンも機能しないため、TSMCを中国に奪われることはアメリカにとって死活問題であるためアメリカは本気で台湾を守る。
中国にとってもロシアにとっても海外資産の凍結を怖れる幹部が自分たちの財産を守るために習近平政権・プーチン政権を崩壊させるというのが一つのシナリオ。もう一つは台湾併合を強行しアメリカ介入により失敗して習近平もプーチン同様失脚するというのがもう一つのシナリオ。
これぞ、今こそ、読んでおきたい本です。このような習近平とプーチンを対比させながら、問題の本質を分かり易く解説する本を待ち望んでいたので、とても参考になりました。産経の中国・ロシア報道はこれからも注視してよく読んでいきたいと思います。