2022年9月29日第1版第1刷発行
帯封「米中戦争へのタイムリミット 日本が暴風域に巻き込まれるのは必然だ」「『今、台湾に何が起きているのか。台湾人に何が起こっているのか。私たちの視線の真ん中に台湾を置いて、書いてみよう。その後にやってくるのは嵐かもしれない。嵐はすでに進路を決定して日本が暴風域に巻き込まれるのは必然だとすれば、やはり、台湾の姿を肉眼ではっきりと見つけることが必要なのだ。台湾海峡から来る嵐のほうにしっかり顔を向けよう』(本書『序にかえて』より」
表紙裏「『米台は自主自決の運命共同体であるだけでなく、多くの共通の安全保障のテーマをもつ』『我々は台湾を絶対見捨てない』。2022年8月、米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪れ、蔡英文総裁と会談した。中国の習近平主席によって、威嚇的・脅迫的な『闘狼外交』が無意味であると証明された瞬間である。中国は台湾のEEZ(排他的経済水域)と同時に、与那国島の近海にある日本のEEZにもミサイルを撃ち込んできた。もはや日台両国は一蓮托生。武力侵攻の行方を探るとともに、日本が台湾問題から逃げず、正面から民主主義の危機に向き合う覚悟を問う。」
「第3章 台湾侵攻のタイムリミット」の内容は、最新の情報に基づいて、2027年説、2028年説、はたまた本当は戦争をしたくない解放軍など、緻密な分析をしており、俊逸。特に2027年説の根拠の一つになっている、国家総合立体交通ネットワーク計画綱要の中で2035年までに「全国123移動交通圏」「世界123速達物流圏」がぶち上げられている中で、前者の全国主要大都市の中に台北が含まれており、35年までに福州と台北が高速鉄道・高速道路で直に結ばれることになっていることから、台北福州大橋の完成・開通を実現するなら逆算して2027年が台湾統一のリミットという説は本書で初めて知った。加えて米CIAのバーンズ長官は7月20日、目下の課題は「中国指導者が数年後に台湾武力統一をしようとするのか否かの問題ではなく、いつ軍事行動を行うかの問題である」と語り、もはや中国による台湾に対する軍事行動は決定しているとの見方を示した、との指摘は正直衝撃的だ。
「第4章 台湾と中華民国の異なる歴史」のうち、台湾の歴史は殆ど知らなかった。勉強不足を恥じ入るばかり。特に霧社事件を扱った『セデック・バレ』、『KANO 1931 海の向こうの甲子園』、2・28事件を取り上げた『非情城市』の3本の映画は必見だと教えられた。本章の最後では、国際勝共連合の誕生の歴史にも言及されている。
「第5章 奇跡の日台関係」で『続・台湾に何が起きているのか』で平和的手法で真の民主主義を獲得し、巨大化した中国の脅威の荒波を巧みな外交で渡りながらタイワニーズとしてのアイデンティを確立していくプロセスと台湾の現在と未来予想図を取り上げる、とあった。いつ上梓されるか分からないが、早く読みたい一冊だ。