ウクライナの現場から 佐藤和孝

2023年1月9日初版第1刷発行

 

◎目次

序 章 ロシアのウクライナ侵攻を、なぜ許してはいけないのか

    ウクライナ侵攻は、8年前に始まっていた

    玄関からいきなり踏み込んできて、家族を打ち殺す暴挙

    首都攻略の電撃作戦に失敗、東部制圧に切り替えた誤断

    ロシア連邦が負ければ、抱える紛争が一気に再燃する

    驚くほど弱かったロシアの軍事力

    世界史が変わったと認識した方がいい

第1章 20万人の避難民を受け入れた市民たちの戦いー国境の街リビウ

    避難民が押し寄せる国境を越え、古都リビウへ

    着の身着のままの人たちを支える市民ボランティア

    自分にできることで国の役に立ちたい

    「自分の死より、国が亡くなることの方が怖い」

    地域防衛隊の検問所で、何度も止められる

    プレスとして戦場で取材するとき

第2章 空襲警報と砲撃のなか、ウクライナは一つになった

    砲撃された商業ビル、老夫婦の崩れたアパート

    地下鉄ホームで暮らしつつ、オンライン授業

    周辺地域で略奪行為をするロシア兵と軍紀の乱れ

    「市民生活」を狙った攻撃と大女優のメッセージ

    大統領の覚悟がウクライナ国民を一つにした

    三月末にロシア軍が撤回、少しずつ日常が戻る

第3章 ロシア軍の市民を狙った破壊と殺害の現場を見た―「ブチャの虐殺」

    橋を爆破し、歩いて川を渡る一般市民を銃撃した

    無人の住宅街と、公園に立つ小さな墓標

    ブチャと周辺都市で行われた破壊と残虐行為

    略奪してから、わざわざ派手に破壊する手口

    見たこともないような大量の戦車の残骸

    記者が狙い撃ちになったイルピン、ブチャ

第4章 ジャーナリストとして、現地取材に思う

    ソ連から独立して民主化された若い国

    理不尽な侵攻が、世代を超えた結束を生んだ

    ロシア軍は、なぜ一般市民を虐殺するのか

    第一次世界大戦のときもパンデミックだった

    戦車部隊が歩兵の兵器で撃退される時代

    「ファクト(事実)」とは何かを見極めるために

第5章 現在の戦況と六年前の東部ドネツク取材

    兵力差よりも大切な「兵站」と「士気」

    親ロ派武装勢力の案内でドネツク州に入る

    生活のために従軍した気のいいロシア兵たち

    言葉があるなら、交渉で解決してほしい

    安全な場所で命令している者は、現場に来い

    6年前のドネツク取材とウクライナ侵攻

第6章 歩いてきた戦場との比較から―佐藤和孝の眼

    アフガン侵攻とウクライナ侵攻の共通点

    ゲリラは勝ち負けより、いることが大切

    食べられないから「ムジャヒディン」になる

    戦争は、普通の人間を狂わせる

    なぜ人間は、学べないのか

    「ゆでガエル」になっていないか

 

・ロシアが配色濃厚になり、現政権の存続が危ぶまれるようなことになれば、プーチンが劇的に状況を変えるには核や生物兵器を使うしかない。

・ゼレンスキー大統領は44歳、プーチン大統領は70歳、ウクライナ鉄道のカムイシンCEOは37歳。ウクライナは若い国。ロシアの男性の平均寿命は67歳。

・ロシア軍の戦費は1日に2~3兆円かかっているという。世界11位のロシアのGDPが約172兆円だから1日3兆円とすれば2か月で年間GDPを上回る。

・いまウクライナを支援する国々は大変な試練に見舞われている。燃料費が高騰し‥ロシアにエネルギーを握られている国は本当に苦しいと思う。それでもウクライナの民主主義を守るために支援を続けるしかない。やりきれなければ、世界秩序は崩壊する。第二次世界大戦後、なんとか地域紛争でとどめてきた平和な世界は終わり、世界中の国々が巻き込まれた力だけが物を言う新しい情勢が出現する。専制主義と民主主義の戦いに民主主義が譲ってしまえば、人類の歴史は何百年も巻き戻ってしまう。今の苦しみに負けるか、未来に禍根の種を残さないよう戦うか。世界はかつてない岐路に立たされている。