ウクライナ危機から考える「戦争」と「教育」 日本教育学会 国際交流委員会編

2022年10月5日初版発行

 

帯封「戦争に対して教育は『無力』か。日本の平和教育に意味はなかったのかー。戦争が起きるとき、教育はときに戦争に荷担する役割も担ってきた。でも、平和を構築していくために、教育にしかできない役割もある。戦争を防ぐためにも、戦争後の平和な社会を実現するためにも。このたびのロシアによるウクライナ侵攻を受けて、私たちは『教育』という営みを改めてどう考えればよいのか。そしてこれからの学校教育をどうつくっていかなければならないのか。4人の専門家が語り尽くす。小玉重夫/北村友人/小松太郎/澤野由紀子」

「第1章 セミナーⅠ ウクライナ情勢を考えるー教育学に何ができる? 第2章 セミナーⅡ ロシアの教育の変遷と、日本の教育のこれから―学校をコモンズの場に 第3章 紛争のリアルと、日本の教育のこれから―2つのセミナーの補足」

 

2015年にノルウェーとアルゼンチンが音頭をとって「学校保護宣言」が策定され、現在114か国が調印しているが、日本は未調印。ウクライナも調印しているが、ロシアは未調印。

地雷回避教育、すなわち友達が地雷を踏んだ時の対応いついて具体的にどうすべきと教えるのか?最近の地雷は足だけ吹っ飛ばすのでパニックになって逃げないよう(そうしてしまうと次々に地雷を踏んでしまいかねないので)その場を絶対に動かないということを教える。

ユネスコの「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」という有名な一文につづいて、「政府の政治的及び経済的取り決めのみに基づく平和は、世界の諸人民の一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって、平和が失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かれなければならない」と続く。

ユネスコスクールでは、例えばコソボでは「平和」「民族共存」という言葉は使わない。もし使ったら周りから「こいつは何もわかっていない」「相手の民族に肩入れしている」と思われてしまう、ということを教えて、さまざまな民族の人たちが自身の関心事をもとに協力していく場をつくり、互いの信頼関係をつくっていくというアプローチを用いていた。

スウェーデンでは、クリミア併合後、いつロシアが攻撃してきてもおかしくないということで、各家庭に、実際に他国から攻撃にあったらどう行動すべきかというパンフレットが配られていた。

ウクライナは2004年のオレンジ革命、2014年のマイダン革命と、10年周期で市民革命的な動きがあるが、この動きは香港に対する中国の動きと相似している。

民族間の対立を乗り越えるためには、そこに具体的な人の顔が見えるということがとても大事。