ウクライナ侵略戦争―世界秩序の危機 世界no.957臨時増刊号

2022年4月14日第1刷発行

 

戦争を終わらせるためにー人道上の危機と国際関係の危機 平和構想研究会

昨今の核共有や非核三原則見直しの主張に対し、これらは核の脅威が高まっているから我が方も核の軍事力を強めようという程度の感覚で語っているにすぎず、その政治的悪影響は深刻であると強く警告している。キューバ危機を経験した中南米は世界初の比較兵器地帯を通リ、モンゴルは非核兵器地帯の地位を確立。核兵器禁止条約への各国の批准を促進することが今まさに重要と指摘。軍事同盟によって世界を分割するのではなく多元的な予防外交を展開し国連が掲げる戦争の克服という目標に世界を近づける、それこそが平和憲法を持つ日本が今日果たすべき役割であると結論づけている。

 

資料と解説 異なる視点―第三世界ウクライナ危機 栗田禎子

A 国連安保理でのケニア国連大使の発言(先進諸国によって分割・植民地化されたアフリカの経験との共通性を指摘しつつ、ロシアの行動が国際法違反であると述べた点が重要)、E パグウォッシュ会議の声明(現実的解決の手がかりとして「ミンスク合意」等の過去の交渉の実績・到達点を改めて参考にすべきだという認識は意味を持つ)はじめ、Bインド共産党清明、Cキューバ代表の国連総会緊急特別会合における演説、D南アフリカ代表の国連総会緊急特別会合における演説は、いずれも「棄権」という行動を取ったものの、背景が異なると分析。B・Cは、NATOによるロシア敵視政策がロシアに脅威を与え今回の事態の原因になったことを批判し、Dは国際法国連憲章重視の姿勢は一貫させつつも他の長期紛争に対しても同等の関心を注ぐことを求めている。

 

それ以外にも、多くの論考が寄せられており、大変勉強になる。