コモン・センス トマス・ペイン 角田安正訳

2021年6月20日初版第1刷発行

 

裏表紙「イギリスと植民地アメリカの関係が悪化するなか、王政、世襲制の非合理性を暴き、国家を冷静な眼差しで捉えたペイン。独立以外の道はなしと喝破した小冊子『コモン・センス』は世論を独立へと決定づけた。ほかペインの筆の力が冴える『アメリカの危機』『厳粛な思い』『対談』も収録。」

 

 イギリスのコルセット職人の子として生まれたトマス・ペインがアメリカに渡ったのは37歳。1776年1月に発売されたこのパンフレットは大ベストセラーとなり、アメリカ独立宣言に影響を与えた。

ペインは「社会は人間の必要を満たすために形成され、国家は悪を懲らすために形成される。社会が人間の心と心を結びつけることによって人間の幸福をますます高めるのに対し、国家は悪を抑制することによって幸福の低下を防ぐ」という(第1章)。王政と世襲制の不合理性を容赦なく暴いた後(第2章)、アメリカはイギリスと訣別すべきであると断言し、アメリカの現状を分析して独立の可能性を具体的に説明する(第3章)。結論部分では、今こそ独立すべきであると激を飛ばし、その理由として、13植民地が団結すれば陸上兵力は現状で十分備わっている、イギリスと訣別しても必要な海軍力を備えることができる、占有されていないときが多いので政府が民間に払い下げすれば財政を潤すことができる、今後商業が発展すれば愛国心と国防意識が薄れる可能性がある、の4つを挙げる(第4章)。

 巻末の訳者解説では、ペインのこうした主張は現代人にとってそれほど斬新なものではなく、むしろありきたりとも言えよう、としながら、現代の読者にとり学ぶべき点があるとすれば、「後の世代の利益を重視する姿勢」ではないだろうかと指摘する。ペインは「私たちはおのれの義務の筋道を正しく知るために、自分たちの子孫に対する責任を引き受け、観測点を何年も先に設定して世の中をのぞくべきである」という。

 

簡潔ですっきりとした文体は大変読みやすく説得力がある。