2015年4月25日発行
帯封「日記・書簡の史料収集、歴史観論争、そして政界、官界へのオーラル・ヒストリー 近現代史を切り拓く」
表紙裏「日本近現代史研究を牽引してきた大家が、八〇年以上にわたる自らの歩みを語る。若き日の共産党体験、歴史観をめぐる論争、伊藤博文から佐藤栄作にいたる史料収集と編纂、岸信介、後藤田正晴、竹下登などへのオーラル・ヒストリー…。その秘話やエピソードは、歴史の面白さを伝えると同時に、史料を集め、次代へ引き継ぐ歴史家の責任の重さをも物語る。史料を駆使して、近現代史を切り開いた泰斗の稀有な回想録。」
目次
まえがき
第1章 共産主義との出会いと訣別
第2章 昭和史へ―史料収集事始め
第3章 木戸日記研究会のことなど
第4章 革新とは何か
第5章 ファシズム論争
第6章 近衛新体制をめぐる人々
第7章 戦前・戦中・戦後の連続性
第8章 茨城県議会史と東大百年史
第9章 明治の元勲から岸・佐藤まで
第11章 インタビューからオーラル・ヒストリーへ
第12章 竹下登、松野頼三、藤波孝生―オーラル・ヒストリー①
第13章 海原治、渡邉恒雄、宝樹文彦―オーラル・ヒストリー②
終章 史料館の挫折と人物史料情報辞典
あとがき
第5章のファシズム論争は俊逸だ。ファシズムという言葉を使わず日本史教科書を新しく書き直すぞとの決意だったこと、ファシズムではなく軍部支配という言葉で説明しようとしたことなどが書かれている。それ以外は膨大な史料収集を行い、それをどのようにして遺していったかに大半のページ数が費やされている。
その視点は、『昭和初期政治史研究』の図式の中に萌芽があった。
横軸左に進歩(欧化)、横軸右に復古(反動)を、縦軸上に革新(破壊)、縦軸下に斬新(現状維持)を置き、この図式から「大正デモクラシー」「ファシズム時代」といった時代区分に疑問を投げかけた。この図式を誰も崩せていないというのが筆者の根拠のように思われる。