ヴォルテール 哲学書簡 中川信訳 哲学辞典 高橋安光訳

2005年10月10日発行

 

1694~1778 フランスの啓蒙思想家、文学者。本名はアルエ。パリに生まれ、イエズス会系の名門校ルイ・ル・グランに学んだ。1717年、時の摂政オルレアン公を諷刺した詩を書いたかどでバスチーユに約1年投獄される。その後、滞英見聞報告という装いのもとに、フランスの政治・宗教・哲学などを厳しく批判した『哲学書簡』を刊行、直ちに本書は発禁処分となった。身の危険を感じて愛人シャトレ夫人とシレーへ逃亡、約10年間同地に滞在し学究生活を送った。晩年はスイスとの国境に近いフェルネーに安住の地をみつけたかにみえた。しかし78年、自作の悲劇『イレーヌ』の上演に立ち会うため、28年ぶりにパリに帰還、市民の熱狂的歓迎を受けたが、疲労から死去した。生前の影響力は全ヨーロッパに及び、しばしば18世紀は「ヴォルテールの世紀」と呼ばれる。

 

増田真「アンガージュマン」の先駆者

 ヴォルテールの思想的活動の中心的な領域は宗教であり、反教権闘争である。カトリック教会から人々を解放しようとする運動が反教権闘争であり、それは同時に信仰の自由や宗教的寛容を求める動きでもあった。

 本書に収録されているのは『哲学書簡』全体と『哲学辞典』の一部であり、ともにヴォルテールの代表的著作とされるものである。『哲学書簡』は、ロックの感覚論とニュートン力学をフランスに紹介したことで有名な作品である。