世界の十大小説プラスワン 谷沢永一

1999年4月10日第1刷発行

 

表紙裏「◎[プラス・ワンVOICE]本書は、世にあまたある“リーダーズ・ダイジェスト”の傑作に位置するサマセット・モーム著『世界十大小説』に少しでも近づこうとの蛮勇で、企画されたものです。そのひそみに倣い、あくまでも読者を胴震いさせる小説作品からのセレクションを主眼としました。しかし、読者が睡眠不足に陥るほどエキサイトさせてくれるという意味では、小説もノンフィクション作品も同罪です。そんな意味で、どうしても看過できぬ存在が一つありました。それが、開高健の『オーパー!』でした。これを『十大小説』のほかに付け加えることで、小説作品に敬意を払い、同時に偉大な一作家へのオマージュを捧げたつもりです。一味違う“おまけ付きリーダーズ・ダイジェスト”をとくとご賞味あれ!」(編集部)」

 

燃えよ剣 司馬遼太郎

 

モンテ・クリスト伯 アレクサンドル・デュマ

 

坊っちゃん 夏目漱石

 

赤と黒 スタンダール

 

赤穂浪士 大佛次郎

 

月と六ペンス サンセット・モーム

 

三国志 吉川英治

 

マノン・レスコー アベ・プレヴォ

 17歳のシュヴァリエ・デ・グリューの前に現れた美しい少女マノン・レスコー。15歳くらいの年格好で修道女になろうとしていたが、デ・グリューは一瞬にして激しい恋に陥る。その場で手を取り合いパリに駆け落ちする。彼の親友チベルジュは二人の行く末を危惧するが友情への忠誠からデ・グリューを援助する。しかしその援助も二人の浪費に追いつかず、金が底をついた時、マノンは彼女に言い寄る紳士らに金の無心をする。結果、デ・グリューを裏切る形となり彼は煩悶の日々を送る。マノンは愛を貫いていると言う。紳士らは二人に金を巻き上げられていると気づく。運が尽き二人は投獄される。デ・グリューの父親の尽力でシュヴァリエは釈放されるが、マノンは北米に追放される。そして、デ・グリューはその後を追う。今から300年近く前のフランスの古典小説。恋愛小説の最も基本的な型を提示した名作として紹介されている。

 

ロビンソン・クルーソー ダニエル・デフォー

 

樅ノ木は残った 山本周五郎

 原田甲斐。非情と冷酷を余儀なくされる勇猛の決断、冷徹な見切りにたじろがぬ感傷の扼殺、味方のことごとくを冷たく遠ざけ失望させ立ち去らせて正真正銘のひとりぼっちとなっても、人知れず己の使命を全うする。事の大小を見抜き放っておけば大騒動に発展する小さな出来事の危険性を察知して未然に日を消す俊敏な対処。結果として効あって功なし。注目されず認められず褒められない。徒労を覚悟の尽瘁。最後に国は救われるもその代償として甲斐自身は刺客の刃に倒れ一族殺戮、家門断絶、逆臣の汚名が残る。文学史上空前にして絶後ともいうべき山本周五郎の最高傑作。

 

オーパ! 開高健

 ノンフィクション・アマゾンフィッシング旅行記。メモを取らずその場その時で受けた感動を眼球と頭脳にたたき込み言葉のマジシャンたる作家の手による躍動する自然を微細に、縦横無尽に比喩、擬人法を駆使して読者をして情景を浮かべるにたやすい作品に仕上げている。

 

 特に、樅ノ木は残った、は再読したくなりました。