未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること 河合雅司

2022年12月20日第1刷発行 2022年12月23日第3刷発行

 

帯封「物流 運転手不足で10億トン分の荷物が運べない 寺院 多死社会なのに寺院消滅 インフラ 水道料金が月1400円上がる 鉄道 駅が電車に乗るだけの場所でなくなる 住宅 30代が減って新築が売れなくなる 公務員 60代の自衛官が80代を守る 金融 IT人材80万人不足で銀行トラブル続出」

裏表紙裏「日本が人口減少に太刀打ちできるようにするには、どうしたらいいのだろうか。答えは、経済成長するしかない。成長しさえすれば、人口減少や少子高齢化は止められないものの、これらによって引き起こされる当面の弊害のかなりの部分が解決する。だが同時に、人口減少が日本経済の足を引っ張る主要因ともなっている。。この大いなる矛盾を解決するには、マーケットが縮小しても成長するビジネスモデルへと転換することである。『言うのは簡単だが、そんな都合のいいモデルがあるはずがない』との声が聞こえてきそうだ。もちろん魔法の杖などない。だが、日本は瀬戸際にあり、過去の成功体験と決別せざるを得ない。発想さえ変えれば十分に可能だ。それには各企業が成長分野を定め、集中的に投資や人材投入を行うことである。『戦略的に縮む』のだ。かなり思い切ったことをしなければ人口減少におしつぶされてしまう『戦略的に縮む』という成長モデルを実現するためには、いくつも手順を踏まなければならない。本書はそれを明らかにしていく。-『はじめに』より」

 

第1部 人口減少日本のリアル

    個人的に衝撃を受けた事実の数々のうち代表的なものを以下に列記する。

ローカルテレビ局の営業利益の急減は驚異的だ。

114局の合計が57頁にグラフ化されて掲載されているが、2016年の売上高7170億円、営業利益が566億円が、2019年になると6806億円、306億円、2020年には5933億円、165億円というから、1社あたり5億円の営業利益が1億円に減少した計算になる。更に総務省はマスメディア集中排除原則など民放を規制してきた根幹のルールを大胆に対応し、ローカルテレビを集約する動きに出そうなので、設備投資は軽減されても恐らく広告収入は更に厳しさを増すことが予想されている。

 

農水省によれば2020年度の日本の食料自給率はカロリーベースで過去最低の37%。2021年の農地面積は435万ヘクタールで、最大だった1961年と比べると174万ヘクタール減少している。この数値も異常だ。

コロナ禍のライフスタイルが定着した場合、新設住宅着工戸数は2015年と2040年比で46.7%減が予想されている。

もっとも道路に関しては老朽化による政府投資の拡大が予想されており、建設後50年を経過する道路施設の割合は2019年3月時点の27%(全国約72万か所)から2029年3月には52%に跳ね上がる。したがってこの分野には人材確保が重要となるが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の推計によれば2017年から2040年にかけて鉱業および建設業の就業者数は約4割減少する、というのだから、人手不足は深刻だ。

国交省の2022年版交通政策白書によると、2020年度は乗り合いバス事業者の99.6%が赤字。同年度の廃止キロ数は鉄道が146.6㎞に対し、路線バスは1543㎞。

 

第2部 戦略的に縮むための「未来のトリセツ」(10のステップ)

ステップ1 量的拡大モデルと決別する

ステップ2 残す事業とやめる事業を選別する

ステップ3 製品・サービスの付加価値を高める

       薄利多売から厚利少売へのシフト

       ポルシェ1台はアウディ5.4台を売ったのと同じ計算になる

ステップ4 無形資産投資でブランド力を高める

       知的財産権とブランド力を活用してマークアップ率(付加価値率)を高める

ステップ5 1人あたりの労働生産性を向上させる

       ブルショット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)を減らす

       DXは1人あたりの労働生産性を向上させる大きなチャンス

ステップ6 全従業員のスキルアップを図る

ステップ7 年功序列の人事制度をやめる

ステップ8 若者を分散させないようにする

ステップ9 『多極分散』ではなく『多極集中』で商圏を維持する

ステップ10 輸出相手国の将来人口を把握する

       今後30年間の人口増加の半数以上がサハラ砂漠以南を中心としたアフリカ諸国で起こる。中央・南アジアも激増エリア。西安交通大学の研究チームは2050年の中国人口は7億人台にまで減ると予測している。高齢者マーケットに絞るなら中国、長期的視点に立つならインド市場にということだ。