動物農場 ジョージ・オーウェル 開高健訳

2013年9月10日第1刷発行

 

裏表紙「飲んだくれの農場主を追い出して理想の共和国を築いた動物たちだが、豚の独裁者に篭絡され、やがては恐怖政治に取り込まれていく。自らもスぺイン内戦に参加し、ファシズム共産主義にヨーロッパが席巻されるさまを身近に見聞した経験をもとに、全体主義を生み出す人間の病理を鋭く描き出した寓話小説の傑作。巻末に開高健の論考「談話・一九八四年・オーウェル」「オセアニア周遊紀行」「権力と作家」を併録する」

 

動物主義を掲げた豚のメージャー爺さんはいわずもがなレーニンで、彼が掲げる「動物主義」は共産主義。豚のナポレオンはスターリンで独裁政治を行う。豚のスクィーラーはモトロフが、豚のスノーボールはトロツキーがモデル。ナポレオンが育てた犬は秘密警察、後のKGB。羊たちは大衆。ミニマスのモデルは?

カラスのモーゼは神父、牡馬ボクサーは国民的英雄の軍人、牡馬クローバーは母親像、農場経営者のジョーンズは資本家、雌馬モリー若い女性、猫は子ども、ロバのベンジャミンは知識階級(ひどく冷静沈着なので恐らくオーウェル本人)、卵を産むめんどりはウクライナ人。

動物農場の外との仲介役のウィンスパー弁護士には、食料がタンマリ貯蔵されている倉庫を見せて動物農場が成功していることを喧伝させている。

ピルキントン氏はチャーチルフレデリック氏はヒットラー

最初の動物たちの反乱は10月革命、人間による農場奪還(牛舎の戦い)は干渉戦争、風車建設問題は大規模集団農業、めんどりたちの反乱はクロンシュタットの反乱、ナポレオンによる動物たち(次々とショッキングな罪を告白した)への処刑はスターリンによる大粛清、

フレデリックとナポレオンの取引は独ソ不可侵条約締結、風車の戦はバルバロッサの戦、ナポレオンとピルキントン氏らの会合はテヘラン会合がもじられている。

七戒が一つずつ知らず知らずのうちに改ざんされる(書き加えられてしまう)。ベッドに寝るなかれは、シーツを敷いたベッドに寝るなかれに、動物を殺すなかれは、理由なく動物を殺すなかれに、そして酒を飲むなかれは、酒を飲み過ぎるなかれに。

革命成立直後こそ全ての動物は理想郷が実現したと皆歓喜するが、次第にナポレオンとその取り巻き達を除いて他の動物たちはひもじい思いをどんどんしていく。七戒に反しているんじゃないかと思いつつも、頭が悪いために最初の七戒を思い出せず、書き換えられた七戒に違反していないように思い込まされてしまう。

そして最後に豚は二本足で立ち上がり、ナポレオンとピルキントン氏はカードゲームで喧嘩となり、もはや人間と豚の区別が周囲からもつかなくなって物語は終わる。痛烈な諷刺物語である。しかし1945年8月17日という第二次世界大戦直後にこの本を出版したというのだからオーウェルの度胸はスゴイ。世界に二人といない人だと思う。