賢い人の秘密 天才アリストテレスが史上最も偉大な王に教えた「6つの知恵」 クレイグ・アダムス 池田真弥子・訳

2022年12月13日第1刷発行

 

表紙「01演繹 賢い人には論理力がある。 02帰納 賢い人は自分を疑う。 03類推賢い人はたとえ話がうまい。 04実体 賢い人はでたらめを見抜く。 05意味 賢い人は曖昧さを避ける。 06証拠 賢い人は『ひとつの真実』に縛られない。」

帯封「『頭がいい』とは、こういうことだ。学校では決して教えてくれない『混沌の世界を生き抜く』思考の秘訣!」「『見せかけの真実』にだまされるな。社会性を身につけても賢くはなれない。最新研究でわかった賢さの秘密 一番賢いのは何学部の学生か 隠れた前提を探せ 人は頭の中の空白を嫌う 感情的な言葉は賛同を得やすい 理解できるものしか聞こえない 学びとは世界の捉え方を知ること」

表紙裏「『知性』は謎に満ちている。本書で、その正体を暴いていきたい。まずはシンプルに述べよう。知性とは、何を知っているかではない。どう思考するかだ。」

 

目次

はじめに

第1部 何を学べば賢くなれるのか

第1章 人は誰でも賢くなれる

第2章 抽象概念の力

第2部 賢くなるための6つの秘密

第3章 賢い人には論理力がある 賢者の思考法 その1「演繹」

第4章 賢い人は自分を疑う 賢者の思考法 その2「帰納

第5章 賢い人はたとえ話がうまい 賢者の思考法 その3「類推」

第6章 賢い人はでたらめを見抜く 賢者の思考法 その4「実体」

第7章 賢い人は曖昧さを避ける 賢者の思考法 その5「意味」

第8章 賢い人は「ひとつの真実」に縛られない 賢者の思考法 その6「証拠」

第3部 知性を有効に使う

第9章 どうすれば人は理解しあえるか

第10章 知性を現実世界で生かす

第11章 どうすれば人は幸せになれるのか

 

はじめに

アリストテレスは、人が真実を求めて考え、議論し、説明、証明しようとするプロセスについて、人類史上初めて記述した人物である。アリストテレスは自らの考えをまとめ、説明するにあたり、14歳のアレクサンドロスをはじめ、若年者にも理解できるように、また日常生活に活用できるように心を砕いた。可能な限り明快に、かつシンプルに述べることを心掛けた。本書もその姿勢に倣いたい。

 

・医師は体のことをよく知っている。弁護士は法律の知識が豊富だ。でも、日々の生活において物事を判断するとき、医師や弁護士が特殊な観点を持っているのは、専門知識があるからではない。他の人に見えないものが見えるかどうか。その分かれ目となるのは、何を知っているかではない。どう思考するかだ。・・つまり、学んだものを、未知の不確かな状況に応用できるということだ。それを知性と呼ぶならば、抽象概念こそが、一人ひとりの学びを現実世界に生かすための鍵だ。

・「演繹」という言葉を見つけたのもアリストテレスだ。

 すべての犬は4本足だ

 このテーブルは4本足(脚)だ

 従って、このテーブルは犬である

これのどこにごまかしがあるのか?こういう問題を立てながら、演繹とは何かということを分からせていく(ベン図を書くと分かりやすい)。

・普遍的な前提であればこそ成り立つ演繹であって、その前提がなければ演繹は成り立たない。したがってその前提が普遍的であるかのように装うニセモノに騙されてはいけない。隠れた前提がある場合も同様である。

 

帰納とは、個別事例のしるしから、普遍的な法則を生み出すこと。ただし演繹が普遍的法則から個別事例へ向かう確かな一歩であるのに対して、帰納はいついかなるときも、個別事例から普遍的法則への不確かな飛躍でしかない。

 

アリストテレスは類似を利用すれば普遍的なものがぼかされると述べた。

 「類似を用いて承認を確保するよう心掛けよ。なぜなら、そういうやり方はもっともらしく、また、普遍的なものについてもぼかされるからだ」

 

・観念と物を区別せよ。第1の質問「それは何か?」

・第2の質問「その意味は?」 「質問に一言で答えてはいけない。それは議論の死なのだから」

・最後の問い「何が証拠か?」

 

・ブルームの「記憶」「理解」「応用」「分析」「評価」「創造」というタキソノミーは施行方式や思考法について明確でないために、思考を助けることにならず混乱を招く。

・今の子供達は修辞の時代に育っており、知性とは聞こえ良く語る能力だと教えられているが、思考を説明する手段こそ教えられるべきである。

・我々は、心惹かれる相手からしか学ばない(ゲーテ)。知性的な人格の強さを見せてくれる指導者をこそ我々は求めている。

 

本書は、じっくりと読み、味わうべき書物である。頭の中がクリアーとなり、頭が整理され、頭が良くなったような気がする。こういう積み重ねが地頭を強くしてくれそうな気がする。