藏《二》 宮尾登美子

2008年5月20日発行

 

意造は烈に「北越雪譜」という鈴木牧之という昔の人が書いた本の読み聞かせをして勉強をさせようとしたが、烈は佐穂に教えてもらうと言い、意造を拒絶。後妻には、意造を慕う賀穂の妹である佐穂を、とむらは願うが、意造はのらりとかわす。意造は野積から蔵人として杜氏の平山晋を呼び、酒造りを再開。後妻には二十歳に満たない芸者せきを娶る。賀穂の代わりに奥を取り仕切り烈の面倒を見ていた佐穂は、意造から、この家の空気を変えたい、野積の若い女を後妻にしたい、佐穂のことはこれからも妹として大事にする、後妻が来ても烈のためにいてほしいと勝手なことばかり言われ、祝言の当日、失意の下に新発田に帰る。烈と佐穂を連れ戻すために新発田に出向いた意造は、佐穂の弟の武郎から、佐穂を戸籍上妻として迎い入れてくれと頼まれ、意造は遺言で佐穂にきちんと財産が行くようにすると約束。それを武郎から聞いた佐穂は烈の世話役として田乃内家に戻ると話す。むらは78歳で死去。烈はせきを認めず、毎朝、意造、せき、佐穂、烈の4人で気まずい食事を取ることが日課となる。ある日、烈の手鏡をせきが持っていたために烈から泥棒呼ばわりされる。せきは身籠る。烈は佐穂から裁縫を習い熱心に習得する。せきは無事男の子を出産する。烈は弟の丈一郎の面倒をかいがいしく見る。せきは母として次第に強くなり、烈が丈一郎を抱くことにも万一事故があるといけないと考えて反対する。烈は佐穂と一緒に暮らす家が欲しいと言い、意造は烈の将来と佐穂のことを考え始め、叔父立会で遺言を残す。烈と佐穂のことを十分に考えた内容で、早速烈の佐穂のための家の新築に取り掛かった。