窓辺の風 文学と半生 宮城谷昌光

2015年10月25日初版発行

 

帯封「作家生活25周年を記念する唯一無二の自叙伝 秘蔵写真多数収録 『読売新聞』好評連載の『時代の証言者』に、著者自身が書き下ろした『おまけの記』、さらに未発表作品を収録し、作家の足跡をたどる」「じつは私はまえばかりをみて歩いてきた。すでに書いた自分の小説を読み返したことさえない。雑誌や新聞で連載した小説が、本となってでたとき、つぎに書くべき小説のことしか念頭にないので、その本が発売された直後に、内容について問われると困惑するのがつねである。そういう心の癖をもった私が、しっかりと自分の過去のほうに心の目をむけたのは、これが最初であり、おそらく最後であろう。(本文より)」

 

・日を二つ重ねる昌の字は、白川静博士の説では、星の光だそうです。だから、届くのが遅かったのかもしれない。それは月のように満ち欠けもなく、永遠に消えない光だと思うようにしています(「出直し」決意し円満退社)。

・「王家の風日」を自費出版し、500部刷り、出版社などに送ったが、梨の礫。おはようCBCに呼ばれて、殷の時代は中国に仏教が入る遥か前なので仏教起源の日本語は排して小説を書いたと話したら驚いていた(「私家版」出版社反応なく)。海越出版社から突然連絡があった。押し入れにしまっていた「天空の舟」を送った。45歳で商業デビューが決まった。恩師立原正秋の墓前に報告(四十五歳 恩師の墓前に出版報告)。『夏季春秋』で直木賞受賞し一気に時の人に。

直木賞の選考委員を15年もやっていて一番年長の選考委員になってしまった。新田次郎文学賞吉川英治文学賞の選考もしているが、候補作を読んでいると、その作家のリズムが響いてきて、自分の文章のリズムが乱されてしまう。防衛策として吉田健一小林秀雄の評論を読みリズムを戻してから寝るようにしている(直木賞 選考に思いやり)。

・菅沼定盈を書く準備のため、戦国期と江戸初期に関する史料を集め始め、書庫がいっぱいになり、あらたに書庫を建てるために近くの土地を買うと、妻は「自宅よりこれの方が高くなるなんて…」と巨きな出費を嘆いた(おまけの記24 修史について)。