私の履歴書 江戸川乱歩(作家) 日本経済新聞社 文化人1

昭和58年10月5日1版1刷 昭和60年3月20日1版3刷

 

①私の祖先

②いじめられっ子

③大学は“図書館卒業”

④二十種の職業を転々

⑤初めて「探偵作家」出現

⑥専業作家三十年

 

・祖先は代々三重県津市に住み、父は苦学して関西大学法学部を出た。独立して輸入諸機械販売の店を開いたが破産した。郡役所書記時代に母を娶り、明治27年私は生まれた。破産したのが私が19歳。小学校でも中学校でもいじわるをされた。そのため独りぼっちで物を考える癖が嵩じた。中学5年間の半分位しか学校へ出ていない。熱田中学の第1回卒業生。アルバイトをしながら早稲田大学政治経済科で学び、同郷の政治家川崎克先生を知りご厄介になった。少年時代に黒岩涙香は全部読んだが、ポーやドイルやチェスタートンの短編は謎と推理のエッセンスで惚れ込んだ。卒業後は大阪の南洋貿易の商社に勤めたが1年経たぬうちに飽きてしまい放浪の旅に出た。その頃谷崎潤一郎の小説を読んだ。40歳までに40回住居を変えた。鳥羽造船電気部に就職したときに「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」を読み感動した。大正12年に「二銭銅貨」が掲載され、その後に「1枚の切符」も載った。誰も探偵小説を書いていない時代に先鞭をつけた。毎日新聞をやめて作家専業となった。が17年間休筆時代があった。273冊著書が出た。(昭和40年7月28日死去)