教養としての物理学入門

2018年10月19日第1刷発行

 

目次

第1章 宇宙のビッグヒストリー ― 宇宙・太陽系の始まりと終わり

第2章 地球とエネルギー    ― エネルギー概念の導入

第3章 自動車の物理学   ― 運動量と摩擦力

第4章 転倒の物理学   ― 力のモーメント

第5章 飛行機の物理学   ― 流体力学入門

第6章 IH調理器の物理学   ― 電磁誘導による渦電流

第7章 色彩の物理学   ― 光

第8章 太陽光発電の物理学  ― 光電効果半導体

第9章 電池の物理学   ― 化学反応ポテンシャル

第10章 生命維持とエネルギー   ― 熱力学入門

第11章 お風呂の物理学   ― 熱平衡と熱放射

第12章 エントロピーと社会  ― エントロピー増大則と人間意識の役割

第13章 楽器の物理学   ― 振動・波動

第14章 原子力発電と物理学  ― 核壊変

第15章 CT・MRI・PETの物理学  ― X線・核磁気共鳴

第16章 化学反応と物理学  ― 量子力学の視点

 

・取り上げられているテーマ自体は、日常生活の中で目にする現象ばかりなので、これらが全て物理学を基礎に説明できるということを分かり易く書かれてあるのだろうと思う。が、そこに数式が現れると一気に理解不能に陥る。この点で、入門の域を遥かに超えていると言わざるを得ない。それでも「Focus」「参考」「発展」という3種類のコラムの中には、なーるほど、と思うことや、そうだったのか、と改めて気付かせてくれる内容が盛り込まれているので、眺めるだけなら取っつきやすい入門書であるとも言える。

・例えば、SI接頭語でkキロ102、Mメガ106、Gギガ109、Tテラ1012、Pペタ1015やcセンチ10-2、mミリ10-3、μマイクロ10-6、nナノ10-9、pピコ10-12、fフェムト10-15などは、確かに過去に学んだよねって思い出せてくれる。

・各章の章末問題は、途中までチャレンジしてみたが、やはり解答を見ながらでないと解けないものばかり。が、解答を見るだけで学びにつなげるという効果を意識しての者だろうと思う。

太陽光パネルの構造が、表面電極(陰極)の下側にN型半導体が、更にその下にP型半導体が設置されていて、P型半導体の底面に陽極を接続して出来ているとか、振動と波動の違い(振動はある固定点まわりの揺れ、波動は振動の空間的な伝わり)であるとか、音には高さ(音階)・強さ・音色の3つの要素があるとか、湯川秀樹が解明した中間子の交換により生じる核力は、現在ではグルーオン交換により核力が生じることが分かってきたとか、どこかで聞いたことがあるよなというような内容も結構沢山紹介されている(主にコラムで)。

・面白かったのはCT・MRI・PETの違いが余りついていなかったが(写真でそれぞれの機械が掲載されていて、外見を見ただけでは、恐らくは普通区別付かない)、要はCTはX線だけど被ばく量が多い、MRIは核磁気共鳴画像法と呼ばれ、被爆は少ないが、うるさい、PETはサイクロトロンが必要で高コストという違いがあるのを知っていれば、日常生活に困ることはないだろう。

・最後に、原子量って整数で表されると思っていたのだが、水素は1.008、炭素は12.01で、4桁の原子量表があるのをはじめて知った。リチウムの原子量は6.938から6.997の幅を持つとのことで、へぇーという単純な驚きがあった。