2001年7月25日第1刷 2009年10月10日第27刷
裏表紙「花沢支配人は青ざめた。なんの因果か、今宵、我らが『プリズンホテル』へ投宿するのは、おなじみ任侠大曽根一家御一行様と警視庁青山警察署の酒グセ最悪の慰安旅行団御一行様。そして、いわくありげな旅まわりの元アイドル歌手とその愛人。これは何が起きてもおかしくない…。仲蔵親分の秘めた恋物語も明かされる一泊二日の大騒動。愛憎ぶつかる温泉宿の夜は笑えて、泣けて、眠れない。」
奥湯元あじさいホテルは任侠団体専用の宿である。前作以上にハチャメチャぶりが凄まじい。かつてここまで現実離れした小説は読んだ記憶がない。ヤクザの仲蔵がオーナー経営者で、支配人はヤクザの親分から一目置かれる花沢支配人。今回はプリズンホテルに警視庁の慰安旅行と桜会の大曽根一家が鉢合わせし、しかも往年のスター真野みすずが登場し、ヤクザの大親分と仲蔵とも過去に曰く付きの関係を持ち、しかもアイドル崩れの歌手がヒモのマネージャーに人生を狂わされ、拳銃をホテル内で発射する。それ以外にも指名手配されている集金強盗なる男が登場し、預かった手紙を警察から求められても支配人は応じない。ホテルオーナーの甥の作家・木戸孝之介は今回も登場するが、今回は愛人清子でなくその娘の美加を伴う。ホテルの女将は木戸の実母だったが、子供のころにとうに別れたきりだった。警察と教師と医者の団体旅行はハメのはずし方が尋常じゃなく、署長が猿轡をはめさせられたり、交番警官として大した手柄を立てることなく間もなく定年を迎える老刑事がヤクザと良好な関係を持っていたりとか、まあそのハチャメチャぶりは言語に尽くし難い。