泥の河 宮本輝

太宰治賞(1977年発表)。作者30歳。最初はずぶの素人として登場。とても暗い作品でした。戦後から10年程した時代の、社会の底辺を生きる母子家庭の子どもたちが余りに理不尽な人生を歩くことを余儀なくされている描写がとても生々しい。せっかく友達になったと思ったのに、お別れも言うことができず、別れていく最後の場面は、えもしれぬ暗い描写です。救いがどこにもない、って感じです。強く生きてほしい、という願いをかけるだけです。