井深大と盛田昭夫 人生と人生を切り拓く力 郡山史郎

2023年3月15日

 

表紙「ソニー創業者の側近が今こそ伝えたい 混迷の時代を生き抜く道標(ヒント)になる歴史に名を残した経営者の名言」

裏表紙「前に進む勇気をくれる井深大の『生き方』盛田昭夫の『働き方』 ・『自分のため』だけに働くな ・誰もやらないことをやれ ・仕事は『うまくいかない』のが当たり前 ・去る者は追わず、未来の財産にせよ」

表紙裏「どこにもないものを生み出す発想力 思いを形にしていく実行力 日本を、そして世界を変えた名経営者の言葉が先の見えない未来を照らす松明となる」

 

目次

プロローグ

第1章 運命を変えた、二人の名経営者との出会い 私とソニーと、井深と盛田

すべては一枚の新聞紙からはじまった

採用面接ではじめて目にした“盛田スマイル”

「君には応募資格がない」と採用後に指摘される

井深の指名で務めた通訳

盛田とともに世界を飛び回る日々

井深から「生き方」を、盛田から「働き方」を学ぶ

第2章 井深大の「生き方」 「個人」を尊重する思想の原点

「たくさんの人が喜ぶものをつくれ」

会社のなかでも「個人」を尊重する

    弱者がいかに保護されているかが大切

    「この一のためなら」と思わせる人間力

    「無私無欲」で生きる

    「おもしろい!」と思ったら即行動

    誰のために働くのか

    アメリカに進出した、本当の理宇雄

    スティーブ・ジョブズの心をつかんだ「井深イズム」

    過去にとらわれる会社に、未来はない

    働き続けても、老害にはならない

第3章 盛田昭夫の「働き方」 「天性の人たらし」の素顔

井深の「やろう」を取り消して歩くのが仕事

あえて引き受けた「悪者」という役回り 

盛田に学んだ「危機管理術」

ビジネスはうまくいかないのが当たり前

去る者は追わず、未来の財産にせよ

「実より名を取った」コロンビア映画の買収劇

「目的」ではなく「手段」の経営戦略

ブランディングは「人に知られてなんぼ」

先に相手を信用してみせる

角を立てずに、自分が正しいと思うことをやれ

お金は贅沢や見栄ではなく、ビジネスのために使う

その場を切り抜ける度胸を持て

経団連会長就任の目前での別れ

第4章 井深大盛田昭夫 日本、そして世界を変えた最強の二人

思想の井深、実行の盛田

一番に、いいニュースを伝えたい存在

井深と盛田、不仲説の真相

形にしても、行動しなければ意味がない

ゼロから新しいものを生み出す精神

エピローグ

 

ソニーコロンビア映画を買収したのは、ニューヨークでソニーアメリカの身内になるために必要だったからだ。表向きの理由はハードとソフトがビジネスの両輪になると説明されることがあるが、建前に過ぎない。映画はアメリカ発祥の産業であり、アメリカ文化そのものという誇りがあり、映画会社はアメリカ社会では特別な存在。自動車や電気製品とは位置づけが違う。だから買収はアメリカの魂を買いやがってとバッシングされた。映画会社のオーナーになるとこで政財界のコミュニティーに仲間入りできたことで、人脈、情報その他でビジネス上のメリットは計り知れなかった。これによりソニーアメリカの一流企業と認められ、名門大学の出身者がぞろぞろ入社してくれるようになった。名門企業のブランドはお金だけでは買えない。アメリカ社会に溶け込むためにはハリウッドでオーナーの一員になるのが近道であると判断した盛田さんの判断は正しかった。

・盛田さんから、以前「軍艦に乗ったら艦長が全権を握っている。その艦長がこの軍艦の底に穴を開けろと命令したら、君たちはどうする?」と聞かれた。盛田さんは笑いながら「穴を開けるフリをすればいいんだ」と答えをいった。上司には逆らうな、しかし理不尽な命令は実行するな。二つを両立させるのは命令に従っているフリだけ必死にしていればいい、という。「命令に従っているように見せて、自分たちがやりたいことをやればいいんだ。わしはちゃんと見ているから」

ソニーグループでは、社員の家族で小学校に入学する子どもにランドセルをプレゼントしている。「ランドセル贈呈式」は井深さんの発案で、私が入社した1959年にはじまった。

 

なかなか興味深いエピソードが詰まった、そんなソニーの伝説の2人を、とても読みやすく解説してくれた本だ。