どこでも一寸切れば私の生血がほとばしり出すような文字、そんな文字で書きたい、私の本は。今度の論文も殆どそんな文字ばかりのつもりなんだけれど、それがどの位の人に感じられるものだろうか。
体験からにじみ出た思想、生活と密着した思想、しかもその思想を結晶の形で取り出すこと。
失楽園で有名なミルトンが本当の使命に出会うのは失明という絶望の果てだったと、筆者はいう。そうなんだ。
長島愛生園の近藤宏一さんの詩
ここに僕らの言葉が秘められている
ここに僕らの世界が待っている
舌先と唇に残ったわずかな知覚
それは僕の唯一の眼だ
その眼に映しだされた陰影の何と冷たいことか
(略)
唇に血がにじみでる
舌先がしびれうずいてくる
かなしみとはこれか
だかためらいと感傷とは今こそ許されはしない
この文字、この言葉
この中に、はてしない可能性が大きく手を広げ
新しい僕らの明日を約束しているのだ
涙は
そこでこそぬぐわれるであろう