中谷宇吉郎 雪と氷の探究者 清水洋美

2020年12月 初版第1刷発行

 

随筆で名前を知った中谷宇吉郎。でも、本来は物理学者。

寺田寅彦を師として、人工的に雪の結晶を作るという世界初の快挙を成し遂げる。

その話の前に、自然がいかに美しいか、不思議なものかというエピソードとして、

線香花火の例があがっている。今も線香花火の最後の「散り菊」になるしくみは分かっていないのだとか。枝分かれについては、航空宇宙工学の研究者・井上智博が液体燃料が小さなしずくに分かれる現象を調べていたところ、線香花火の火花と同じ仕組みであることに築いて、枝分かれを繰り返すことを解明したらしいです。またベントレーの2400枚もの雪の結晶の写真にどれひとつとして同じものはないというのも、以前聞いたことがあったようにも思うのですが、改めて考えてみると、本当に不思議な世界です。そんなことに触れつつ、中谷宇吉郎の話に戻っていきます。

ちなみに中谷宇吉郎が大学まで進学できたのは匿名の人の援助のおかげ。後にそれが鳥井信治郎(現在のサントリーの創業者だった方でしたかね)だとわかります。それにしても、中谷が訪ねて来た時に、返したい気持ちがあったら、いずれ天にお返ししなさい、とは、素晴らしい言葉ですね。

次に凍上対策の研究。凍上は鉄道にとっては大変な問題で、この解決は大いに役立ちます。同様に飛行機のつばさやプロペラの「着氷」の研究。同時に子供向けの科学の本の執筆も行う。シカゴでは氷が内からとけて水になる時に出来る「チンダル像(アイスフラワー)」に夢中に。グリーンランドでは雪の粘性を研究。

最後に、小話みたいですが、火星と木星の間には小惑星「ウキチロウ」と「トラヒコ」があるそうです。

どちらも発見した人がそれぞれ敬意を表してつけたそうです。

絵をたしなみ、文を書き、そして雪の研究に生涯をささげ、61歳で亡くなった中谷さんの生涯は、今の若い人にも是非知ってほしいと思います。