かもめ アントン・チェーホフ 内田健介/訳

2022年3月30日初版第1刷発行

 

 巻末の訳者「『かもめ』の誕生から初演の失敗まで」によると、1896年11月17日夜8時、初上演された。しかし、喧噪の中で幕が下ろされるほどの大失敗。翌日の新聞各紙は「眩暈のするような失敗、ショッキングなしくじり」と書き立て、失敗の原因がチェーホフの喜劇の内容な構成の拙さにあるとする意見もあれば、稽古不足と戯曲に対する俳優たちの無理解だとする作者を擁護する意見も出され、賛否両論だったようだ。

4日後の2度目の上演は成功するが、かもめが革新的な作品として認知されるのは2年後のモスクワ芸術座による伝説的な成功を待たなければならなかったらしい。

 

第1幕

 若者トレープレフはニーナに主演を演じさせようとするものの、母で有名な女優アルカージナの言葉に憤り幕を下ろしてしまう。

 

第2幕

 トレープレフはカモメの死骸をニーナの足元に置いて去って行く。小説家トリゴーリンは作家としての苦悩を語りつつ、カモメの死骸を見てアイデアを思いつく。

 

第3幕

 トレープレフは母アルカージナの恋人トリゴーリンをめぐって言い争いをする。ニーナとトリゴーリンはモスクワで再会する喜びに浸りながら長いキスを交わす。2年が経過する。

 

第4幕

 ニーナとトリゴーリンは結婚し子どもを設けるが子と死別し二人は別れ、トリゴーリンはアルカジーナと寄りを戻す。トリゴーリンは、トレープレフのカモメの死骸を小説化シャムラーエフに剥製にするよう注文していたのを忘れていた。トレープレフは形式ではなく心の中から零れ落ちてくることを書くことこそが大事だと独白していると、ニーナと再会し告白する。ニーナは、私カモメなの、違う、女優というセリフを繰り返し、未だトリゴーリンを愛していることを知ったトレープレフは銃で自殺する。

 

 さて、喜劇と位置付けられているのは何故だろう?