2014年12月7日第1刷発行 2019年2月1日第11刷発行
帯封に「永遠に噛み合わない議論、罵り合う人と人。その根底にある「具体=わかりやすさ」の弊害と「抽象=知性」の危機。具体と抽象の往復作業で見えてくる対立の構造と知性のありようとは?」、「『具体=わかりやすい』『抽象=わかりにく』というのが一般的に認知されているこれらの概念の印象です。つまり、抽象というのは一般にわかりくにい、実践的でないといった否定的な意味で用いられているのではないかと思います。これほど役に立ち、人間の思考の基本中の基本であり、人間を人間たらしめて、動物と決定的に異なる存在としている概念なのに、理解されないどころか否定的な文脈でしか用いられていないのは非常に残念なことです。本書の目的は、この『抽象』という言葉に対して正当な評価を与え、『市民権を取り戻す』ことですー「序章」より」とある。
本書で大きな気付きとなったフレーズはこれ。
「下流の仕事のやり方」に慣れている人は、多人数で議論を繰り返して多数決による意思決定をすることが仕事の品質を上げるという価値観で仕事をしますが、これは上流側の抽象度の高い仕事には適していません。上流側の仕事では、口を出す人の数が増えれば増えるほど、焦点がぼけて角の丸くなった凡庸なものになっていくからです。
確かに、最近、一人ないし少人数で決断しなければならない問題と大勢で協議しなければならない問題とが混然一体になっているという気がしていたが、こう頭の中を整理すると、どちらの問題として考えるべきかという基準がハッキリしてくる。