青い鳥 メーテルリンク作 末松氷海子訳

2004年12月16日 第1刷発行 2010年10月5日 第4刷発行

 

『青い鳥』は1908年にモスクワ芸術座で初演され評判になった戯曲。原作者モーリス・メーテルリンクはベルギー生まれ。フランス作家ミルボーに「現代のシェークスピア」と激賞される。1911年ノーベル文学賞受賞。1949年没。

 

象徴主義の詩人らしく、貧しい木こりの2人の子どもたち(チルチルとミチル)が「幸福」の象徴である「青い鳥」を求めて冒険の旅に出る。「思い出の国」では祖父母と再会し、「未来の国」ではこれから地球に生まれてくる子どもたちと出会う。自然の秘密を守り人間の好き勝手にはさせまいとする猫と、人間に忠実な犬との対比があったりファンタジーの要素だけではない。解説によると、本当の幸福と偽りの幸福を見分け、「母の愛」のような尊い無償の愛を知って家に戻ったチルチルにはまわりの世界がすべて今までとは違って美しく見える。自分が飼っていた「青い鳥」を隣家の病気の少女に与えて話が終わる。

どうやら、この話は、幸福とは何かを知ったチルチルが成長し、もはや「青い鳥」を追いかける必要がなくなったことを意味しているように思われる。

自分の力はもっと別の場所で発揮できるとか、もっと違う何かがあるはずとか、現実を受け入れずに青い鳥を探し求めてしまう人々を指す言葉として、かつて「青い鳥症候群」といった言葉を聞いたような気がする。そうならないよう自戒しなければいけませんね。