人口戦略法案 人口減少を止める方策はあるのか 山﨑史郎

2021年11月25日1版1刷

 

帯封「本書はフィクションである、だが語られるのは、すべて現実だ。コロナ禍で出生数の急減が進む。我々は手をこまねき、『小国』になっていくのか。日本再起を目指す者たちの戦略と苦闘を通じ、人口問題の現状と解決策を探る 小説スタイルの新しい解説書誕生‼」

表紙裏「恒久的財源のある分配政策、『子ども保険』構想とは何かー。202X年、海外のシンクタンクが、日本政府の『一億人国家シナリオ』を非現実的とするレポートを発表した。強い危機感を抱いた内閣府の百瀬統括官や野口参事官は、新政権の目玉政策立案に向け、人口問題の勉強会を立ち上げる。そこで専門家から突き付けられたのは、急激な人口減に直面したこの国の、あまりに厳しすぎる現実だった。このままでは日本の国力が大きく喪われてしまう・・・。政府内に設けられた百瀬らによる『人口戦略検討本部』は、現状を緻密に分析、多くの議論を重ねて、ついに抜本的な改革案にたどり着く。だが、その行く手にはさまざまな障害が・・・。」

 

「この物語はフィクションである。登場人物は著者による創作で、モデルは存在しない。しかし、登場人物が語り、取り組む人口減少問題の内容は、すべて公開資料に基づく事実である」

 

ストーリーを追うのではなく、この本に掲載されている多くの図表を読むことで、現在日本が抱えている人口問題が丸ごとわかるのではないかと思い、そんな読み方をしてみた。時間のある時に今度熟読してみようと思う。

 

第1章 一億人国家シナリオの行方 ①朝食勉強会②新政権の発足(~88頁)

1500年から2100年までの日本の長期的な人口推移を折れ線グラフにして掲載(図1-1)

ピークが2008年12月の12808万人で、その後はジェットコースターのように減少し、2100年過ぎには出生低位では4000万人、中位で5000万人、高位で7000万人と予想されている。

1947年から2020年までの年間出生数と合計特殊出生率の推移の棒グラフ・折れ線グラフ(図1-2)

1990年から2110年までの人口推計の比較(図1-3)は内閣府資料に基づき著者作成だが、2110年で①選択する未来委員会は9961万人、②地方創生ビジョンは8969万人、③将来推計人口は5343万人と予測する折れ線グラフ。

図1-4は「人口減少―5つの不都合」と題する著者作成のレジュメ。

図1-5は国民希望出生率の算出方法(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局作成資料

図1-6はわが国の人口の推移と長期的な見通し、図1-7は人口現象の進み方、図1-8は従属人口指数の年次推移<1884~2110年(人口オーナス(負担)を迎える日本の姿が、老年従属人口と年少従属人口との対比で示されている>

図1-9は諸外国の合計特殊出生率の動き(欧米)で、フランス、スウェーデンが2019年でも2%に迫る勢いがあるのに対し、日本やイタリアは1.2~1.4%と低迷している姿が良く分かる。

図1-10は諸外国の合計特殊出生率の動き(アジア)で、日本、韓国、台湾、シンガポール

がどこも厳しい数値を示している。

図1-11では人口戦略の柱(素案)が筆者作成資料として掲載されている。

 3つの政策体系として、①全体の出世率底上げ、②若者の地方居住による出世率向上、③移民による人口増加を挙げている。

 

以下、第2章 高出生率国と低出生率国の違い(~174)

図2-1女性年齢階層別の出生率(国別)、図2-2女性の年齢別出生率の動き(75⇒19年)、図2-3諸外国の女性の年齢別出生率の動き、図2-4年齢別未婚率及び生涯未婚率の推移(男性、女性)、図2-5結婚時の妻の年齢別完結出生児数(15年調査)、図2-6男性の従業上の地位・雇用形態別有配偶者率、図2-7妻の年齢別に見た、理想の子ども数を持たない理由(15年)、図2-8専業主婦世帯と共働き世帯(80~20年)、図2-9女性の就業率と正規雇用率(M字カーブとL字 カーブ)、図2-10女性の理想・予定ライフコース、男性がパートナーに望むライフコース、図2-11主要国における女性労働参加率と合計特殊出生率の推移、図2-12 70年代以降の「出生率」をめぐる動き(メモ)、図2-13「育休制度モデル」とわが国制度の実態、表2-1わが国の子育て世代支援支援制度の概要―出産休業、育児休業、保育―、図2-14子育て支援制度・施設利用割合の推移、図2-15正規雇用労働者・非正規雇用労働者の賃金カーブ(年齢階級別・時給ベース・19年)、図2-16夫の休日の家事・育児時間別に見た第2子以降の出生状況、図2-17福井県における仕事と子育ての両立支援の取り組み、表2-2年齢区分別の保育所等利用児童(21年4月)、図2-18新育休制度の基本構造、表2-3児童手当(家族手当)等の各国比較、

 

第3章 出生率向上のための「3本柱」(~284)

図3-1「子ども保険」制度<全体骨格(イメージ案)>、図3-2「子ども保険(仮称)」〈制度素案〉、図3-3現行制度と新制度(子ども保険)の比較、表3-1子ども保険創設に伴う「粗い財政試算結果」、図3-4OECD諸国における家族政策の公的社会支出対GDP比(17年)、図3-5政策分野別社会支出対GDP比国際比較(17年)、図3-6社会保障財源の全体像(イメージ)、図3-7「子ども保険」の構想、図3-8不妊治療の主な治療法の概要、図3-8生殖補助医療(ART)妊娠率・出生率、流産率(18)、図3-9女性の年齢の変化による卵子の数の変化、図3-10「理想の子ども数を持たない理由」として、「欲しいけどできないから」をあげた夫婦の割合、図3-11子が実際に生まれた時の年齢と第1子を生むのに望ましいと思う年齢の関係、図3-12妊娠・出産の医学的情報の意識調査(20~39歳男女)、図3-13プレコンセプションケア・チェックシート、図3-14年齢とAMH値、図3-15無子女性割合の国際比較:10-11ねんに40~44歳(60年代後半出生コーホート)、図3-16「結婚できない理由」の割合(18~39歳独身)図3-17夫婦の出会い別に見た妻の50歳時の初婚の構成、図3-18出生率向上のための「3本柱」(①子ども保険②不妊治療・ライフプラン(プレコンセプションケア)③結婚支援)、図3-19「不妊治療・ライフプラン」と「結婚支援」に関する緊急提言

 

第4章 「地方創生」と「移民政策」(~400)

図4-1三大都市圏及び地方圏における転入超過数の推移、図4-2東京圏への転入超過数(年齢階層別)15~20年、図4-3都道府県別出生率(20年)、図4-4北海道旭川市、札幌市の人口移動(18年)、図4-5地方と大都市の人口減少の構図、図4-6都道府県別人口の増減(自然増減・社会増減)、図4-7 2045年における総人口の指数別市区町村と割合、図4-8地域ごとの年齢階層別人口推移、図4-9東京圏への転入超過数(15~35歳、20年)、図4-10東京圏への転出入(男女別)、図4-11東京圏への転入超過数上位20自治体(20年)、図4-12東京一極集中の「PULL要因」と「PUSH要因」について(メモ)個人の移動原因、図4-13地方都市における人間関係やコミュニティの閉塞感、図4-14学生が就職先に選択した企業の場所、図4-15出身市町村へのUターン希望―高校時代までの地元企業の認知度別―、図4-16「地域人教育」の3年間のカリキュラム(長野県飯田市)、図4-17本人や親の出生地が、人口移動に与える影響―「ベビーブーム世代」を例にとると―、図4-18非東京圏出身で東京圏在住を経験した者のうち、非東京圏に居住している割合、図4-19東京圏出身者で、非東京圏に居住している割合(両親出生地別)、図4-20「東京一極集中」の今後の行方(メモ)、図4-21地方移住にあたっての懸念(東京圏在住で地方移住に関心がある人)、図4-22テレワークの状況(20年5月、インターネット調査)、図4-23若者に焦点をあてた「地方創生」(案)、図4-24在留資格と外国人数、図4-25各シナリオ別の「補充移民数(95~50年)」と「50年時点における移民(及び子孫)の人口割合」

 

第5章 議論百出の人口戦略法案(~476)

図5-1人口戦略推進体制(案)、表5-1人口戦略の「目標人口・出生率・出生数」、図5-2「目標人口・出生率・出生数」と戦略立案・推敲のプロセス、図5-3「コーホート出生率と「期間」出生率の違い、図5-4 06~15年の出生率反転の背景、図5-5女性年齢階層別の出生率(地域別、19年)、図5-6未婚率と有配偶者出生率(結婚している人の出生率)の都道府県別状況(15年)、図5-7平均初婚年齢(女性)、第1・2・3子出産年齢、図5-8「人口戦略(案)」―「人口戦略の推進に関する法案」(骨子)―、図5-9法案作成・国会提出のプロセス

 

第6章 波乱の「人口戦略国会」(~522)

図6-1法案が成立するまで(参院選挙がある場合)、図6-2介護保険制度が創設されるまでの動き、図6-3高齢化率の推移と長期的な見通し、図6-4人口戦略の目標、図6-5今次通常国会における対応方針について

 

Epilogue 「始まり」の終わりか、「終わり」の始まりかーその後の動き(202Y年7~9月)

あとがき

 

図や表を見るだけでも、いかに豊富なデータに基づいて書かれた作品であるかが分かる。

著者は、厚労省内閣府政策統括官、内閣総理大臣秘書官内閣官房地方創生統括官を歴任。この分野の第一人者と言ってもよい。