チーズはどこへ消えた? スペンサー・ジョンソン 門田美鈴訳

2000年11月30日第1刷 2001年6月20日第25刷

 

20年ぶりに手に取って読んでみた。以前にも読んだはずだが、読み直してみて、激動の現代にあってこそ、読み継がれるに足りる本だと改めて痛感した。AI,ITなど社会の構造そのものが大きな変化を迎えている今だからこそ読み直すべきだと思う。

 

表紙裏に「この物語に登場するのはーネズミのスニッフとスカリー、小人のヘムとホー。2匹と2人は『迷路』のなかに住み、『チーズ』を探します。『チーズ』とは、私たちが人生で求めるもの、つまり、仕事、家族、財産、健康、精神的な安定・・・等々の象徴。『迷路』とは、チーズを追いもとめる場所、つまり、会社、地域社会、家庭・・・等々の象徴です。この一見シンプルな物語には、状況の急激な変化にいかに対応すべきかを説く、深い内容がこめられているのです」とあるが、その通りと思う。

 

苦労の末に見つけたチーズがある日突然消えてしまった。スニッフとスカリーはすぐに探しに迷路を試行錯誤しながら探索する。しばらくしてホーも動かないより動いた方がよいと考え直して動き出す。しかしヘムだけはチーズのあった場所から離れようとしない。そんなヘムにホーは「物事は変わることがあるし、決して同じことにはならない」「それが人生だ!人生は進んでいく。ぼくらも進まなくてはならない」と道理を説くが、ヘムは耳を貸さない。ホーは動き始めるがやはりこの先危険が待ち構えているのではないかとありとあらゆる恐ろしいことが頭に浮かんだ。が、恐怖のせいで悪いほうに考えるのだと思ったホーは、恐怖がなければすることをした。この「恐怖がなければすること」を実行に移すことが一つの肝だ。前に進むことでホーは気分がよくなり愉快な気持ちになりチーズが必ず見つかると確信を持つようになった。「恐怖を乗り越えれば楽な気持ちになる」とヘムのために書き綴っておいた。遂にホーは新しいチーズを見つけた。先にスニッフとスカリーも新しいチーズを見つけていて満腹になっていた。彼らは事態を分析しようとして物事を複雑にすることをせず、状況が変わってチーズが消えてしまうと自分たちも変わってチーズを探しに出かけたから早くチーズを見つけることができたのだ。物事を簡潔に捉え、柔軟な態度で、素早く動くこと、問題を複雑にしすぎないで、恐ろしいことばかり考えて我を失ってはいけない。小さな変化に気づくこと。そうすればやがて訪れる大きな変化にうまく備えることができる。変化に早く対応すること。最大の障害は自分自身の中にある。自分が変わらなければ好転しない。

最後のデスカッションの箇所では、チーズ自体に寿命があっていつかは尽きることを前提に(変化は起きるし変化を予測して変化を探知する=チーズはいつかは消える、消えることに備え、においをかいで古くなったことに気づく)、変化に素早く対応し変わろう、変化を楽しもう、進んで素早く変わり再びそれを楽しもうというホーの書きつけた要点をもとに、更に深めた議論を展開する。特に上層部から変化を押し付けられても反発してしまうので自ら変化に対する考えが変わるように、以前は皆が恐れていたことを笑えるように少しでも微笑むことができるようになって前に進みたいという気持ちを起こさせること、そのためにはこのチーズの話を皆で教え合うことだと。

何処の業界でもAIの波やITの波をもろにかぶり、それがコロナ禍で急速に事態は加速度的に変化してしまった。この変化に対応していけるのか旧来のやり方に固執してしまうのかによって生き残れるかどうかが決まってしまう。旧来のやり方に固執するのは自身が抱く恐怖心から足がすくむからだ。一歩前に出ること、前進すること、変化に対応するために動くこと。今日から、改めてこの基本を心がけていきたい。

この本は、今こそ、より一層、広範囲で通用する名著だと思う。