超訳 自省録 よりよく生きる マルクス・アウレリウス 佐藤けんいち編訳

2019年4月30日第1刷発行

 

帯封「2000年間読み継がれてきた名誉 マンデラ元アフリカ大統領ほか各国のリーダーが愛読、シリコンバレーの起業家たちも注目している 本当は哲学者になりたかったローマ皇帝による人生訓」

表紙裏「『哲人皇帝』が自分自身と対話して記した、生き方の哲学」「自分で自分を苦しめるなんて、ただしいはずがないではないか。なぜなら、私は他人に対してすら、意図的に苦痛をあたえたことなどないからだ」「私は、なにか社会のためになることをしただろうか?もししたのであれば、すでに報酬は得たことになる」「もしそれが人間にできることで、しかも人間がやるのにふさわしいものなら、君にもできると考えるべきだ」

 

はじめに

 五賢帝の最後の皇帝である紀元2世紀のマルクス・アウレリウスの『自省録』は「瞑想記録ノート」である。ローマ帝国の推定人口は6000万人。ローマの人口は100万人に達していた。キリスト教公認以前の時代であり、キリスト教の影響は皆無だが、ストア派の実践哲学が背景にある。マンデラだけでなくクリントン元大統領、トランプ政権のマティス海兵隊退役大将(国防長官)も愛読者の一人。全体487章のうち231章をセレクトして出来上がったのが本書である。

 

1 「いま」を生きよ(001~023)

   001 君にあたえられた時間は制限つきだ。時は過ぎ去り二度と戻ってこない(2-4)

   002 人生最後の仕事であるかのように取り組め(2-5)

   003 失われるのは現在のこの一瞬だけだ(2-14)

   004 いま、この現在という瞬間だけが重要だ(3-10)

   005 なにかあるものが見えた瞬間、それは流されてしまう(4-43)

   006 この世に存在するものは、絶え間ない川の流れのようであり、その活動は常に変化し、もろもろの原因もまた無限に変化している。すべては一瞬のできごとにすぎないのに、こんなことを得意がったり、悩まされたり、みじめになったりするのは、じつに愚かなことではないだろうか(5-23)

   007 この瞬間はあっという間に過去になる(6-15)

   008 精神にかかわる活動であるかぎり、どんなことであっても精神にコントロールされている。コントロールできるのは現在だけだ(6-32)

   009 いま現在の状態に敬虔な気持ちで満足し、周囲にいる人たちにはただしく振る舞うこと(7-54)

   010 このできごとの、いったいなにが耐えがたいのか?(8-36)

   011 思考で全宇宙を包み込み、永遠の時を熟考すること(9-22)

   012 形あるものも記憶も、すべて消え去ってゆく(2-12)

   013 いま存在するものはすべて、これから生じようとしているものの種子だ(4-36)

   014 君自身にとっても変化が必要なことが見て取れないのか?宇宙の自然にとっても変化が必要であるのに(7-18)

   015 喪失は、変化にほかならない。だが、変化こそ自然にとっては喜ばしいものだ(9-35)

   016 あたらしいものなど、なに一つとして存在しない。すべてはおなじみのものであり、いずれもつかの間のものにすぎない(7-1)

   017 過去を知れば未来は予見できる(7-49)

   018 いま現在あるものはすべて、過去においてもそうであったということ、そしてまた未来においてもそうであろうということを、たえず考えること(10-27)

   019 宇宙に存在するすべてが共感しあっている(4-27)

   020 存在するものごとが、すべて調和ある秩序にしたがって配置されているように、生じてくるものは単なる連鎖ではなく、ある種の驚くべき関係をもっているのだ(4-45)

   021 私たちはみな、おなじ目標に向かって協同している。そう自覚している者もいれば、そうでない者もいる(6-42)

   022 宇宙ではすべてがつながっている(6-38)

   023 風が吹き地面に散る木の葉。人の世もまた似たようなもの(ホメロス)(10-34)

2 運命を愛せ(024~046)

   024 運命がもたらすものを愛情もって歓迎すること。静かに神に従い、真実に反する嘘偽りは口にせず、正義にもとることも行わずに、「内なる精神」を忠実に保つこと(3-16)

   025 自分自身を悩ますな。なにごとも単純明快にいこう。生じることはすべて、宇宙の始まりから宿命として織り込みずみだ(4-26)

   026 全体としてただ一つの調和が存在する(5-8)

   027 さまざまな原因がからみあって、君という存在と君に起こったできごとは、永遠の昔から紡ぎあわされていたのだ(10-5)

   028 人間だけが、納得したうえで自発的に運命にしたがうことができる(10-28)

   029 自然が生み出すものはみな美しい(3-2)

   030 世の中に生じることに不思議はない(4-44)

   031 人間の本性が欲しないことをしていないか(7-20)

   032 残りの人生を、自然にしたがって適切に生きること(7-56)

   033 当たり前のことが起きても驚くな(8-15)

   034 あらゆるものに共通する自然は、耐えられないものを君にもたらしはしない(8-46)

   035 宇宙から眺めたらすべては小さい(6-36)

   036 高所から眺めよ(7-48)

   037 いかに多くの人が、君の名前すら知らないことか(9-30)

038 山頂に一人いるかのように生きよ(10-15)

039 余計なものを取り去って裸にし、修正を加えない完全な状態にしてみること。そして、その本来の名前で呼んでみること。ものそれ自体と、それを構成している個々の要素に分解してみること。そうすれば、それがほんとうに何を意味しているのか、理解することができるはずだ(3-11)

040 ものごとは、あるがままの姿で見ることが重要だ(4-11)

041 美しいものに賞賛はいらない(4-20)

042 ものごとの内側を見よ。なにごとであっても、それ固有の性質と価値を見逃すことのないように(6-3)

043 本質は身もふたもない(6-13)

044 人生は垢や汚れのようなもの(8-24)

045 共通する要素に本質を見る(10-10)

046 外側のカバーを取りはずした状態で、それがどう形づくられているのか原因までさかのぼって熟考してみるように(12-8)