2002年11月1日初版発行
第9章 スピーチをどう始めるか
最初の30分は、敵でさえも、リンカーンが言ったことにすべて同意するものだった。そこから彼は少しずつ、話を導き、しまいには聴衆がみんなリンカーンの囲いの中に入ってしまったかのようであった。
要するに、出だしでイエスを引き出せば引き出すほど最終的な提案に耳を傾けてもらえる可能性が高くなる。
第10章 聞き手をとりこにするには
シェークスピア劇・最高のスピーチ(アントニーによるシーザーへの哀悼の辞)
議論をせず、事実だけ摘示して聞き手が自ら自分の意見を出すように仕向けている
第11章 スピーチをどう終わらせるか
終わりは常に短く、美しく
前もって締めくくりを周到に準備し、締めくくりは一語一句覚えてすっきり終わることである。
第12章 わかりやすさは黄金である
重要なことは別の言葉で2回言う
第13章 説得力という魔術
聴衆に感銘を与えたいなら、まず自分が感銘を受けていなければならない。
第14章 何が聴衆の興味を引くのか
第15章 聴衆を行動にまで導く
第16章 さらに話し方を向上させるために
良書に親しんで洗練された言葉を身につける
書物。その中に秘訣があるのだ。語彙を豊富にしたいと思う人なら、常に頭を書物という大きな桶の中に浸しておかなければならない。
リンカーンの弁護士時代のパートナーだったハーンドンは数年前、セオドア・パーカーの演説集をリンカーンに手渡している。リンカーンは「民主主義とはすべての人の、すべての人による、すべての人のための直接の自治でらう」という箇所に下線を引いている。
セオドア・パーカーは、ウェブスターからこの言葉を借りたかもしれない。ウェブスターは4年前にへインに送った書簡の中に「人民による政治は、人民のために、人民によってつくられ、人民に対して責任を負う」と書いていた。
ウェブスターも、30年前に同じ表現を使ったジェームズ・モンロー大統領から借りたものだと思われる。ジェームズ・モンローは誰からこの表現を借りたのか。500年前、ウィクリフが聖書の翻訳の序文の中で「この聖書は人民の、人民による、人民のための政治を行うためのものでらう」と述べている。ウィクリフが生まれるずっと前、キリストが生まれる400年以上の前に、クレオフォンがアテネ市民に行った演説の中である指導者のことを「人民の、人民による、人民のための」と述べている。クレオフォンがどんな古い源からとってきたのかは霧と闇の中に包まれている。
いま、しこしこと本を読み続けていることがきっといつかは役に立つことを信じて、これからも良書に目を通し続けよう。