いじめの「空気」は変えられる! 教室の小さな変化の起こし方 教師・スクールカウンセラー・保護者のためのいじめの本質と予防・対策 諸富祥彦

2022年12月25日初版第1刷発行

 

表紙裏「いじめの本質は『空気』です。ここに、いじめ問題のむずかしさのすべてが集約されているといっても過言ではないでしょう。この『空気』にはとても逆らえない。『空気』を変えるなんてとても無理。そのような無力さが、いじめにはあります。だから、いじめ問題はむずかしいのです。では、『空気』に対抗するには、何が必要でしょうか。それは、『違和感』です。『この空気、なんかおかしいんじゃない?』という違和感。いじめをなくせるか、なくせないかという頭でっかちな議論ではなく、『なんかおかしいよいね』『このままじゃダメだよね』という身体的な感覚。私たちが『いじめ』や正しいことが通じない『いじめ的事態』を目の前にしたときにいちばん大切なことは、この『何かがおかしい』という違和感をもとに、どんな小さなことでも『自分にできること』をしていくことが大切です。本書『まえがき』より-(抜粋)」

 

第1章から第3章

いじめている子は、周りの空気からやめられなくなって、本当にいいのかな、大丈夫かなと思っているけど、空気を壊せず、「まあいっか」と心を鈍磨させて深く考えないようにする。

いじめられている子も、つらいと感じているのだけれど、次第に鈍磨していき、こんなもんかな、もうここから抜け出せないのかな、もう自分のキャラにしちゃったほうがいいのかなとなっていく。

いじめを見ている人にも、いじめを止めたいという気持ちが一瞬湧くが、それだと今度は自分がやばいと思った瞬間に何も感じないようにすることで自分を守る、感じないようにすることで自分を守ろうと自分の感覚を鈍磨させていく。

このすべてを曖昧にしてうやむやにして流す心が事態を変わらなくしているものの本質。そんな曖昧な心に対抗できるのはどんな心か。それは状況全体を眺め俯瞰したときに自分の内側に生じる「このままではいけないのでは」という「違和感」に意識を向け、違和感が発する声に耳を傾ける心の働き。

いじめの空気が止まらなくなる3つのパターン①教育的動機によるいじめの空気に対しては「本来の正義」と「まがいものの正義」を区別することの重要性を理解させていく。②快楽的動機によるいじめの空気や③同調によるいじめの空気に対しては空気そのものを変える介入をしていく。

 

第4章以下は学校教育の場で脱いじめ教育・脱いじめプログラムの具体的な方法を解説している。

第7章 いじめられている子どもへの4つの禁句

①あなたにも悪いところがあるよね②あなたが気にしなければすむことでしょう③あなたがもっと強くなりなさい④あなたの思い違いなんじゃないの?

第8章 被害者への対応

気持ちを十分に聞くことに努める。相談してくれたことを労い、あなたは悪くない、絶対に守ると宣言する。その上で具体的な事実確認をする。聞き終わった後も援助を求めてくれたことを労う。

第9章 加害者への対応

いじめた子の話を聞く時のポイント①事実関係は穏やかに淡々と行う②負の感情を否定せずそのまま受け止める、いじめた子の保護者との面談・援助のポイントはいじめという言葉を使わずに事実を淡々と伝えることが大切。

いじめが発覚したらいじめた子は別室登校とする(いじめ防止対策推進法23条に明記されている措置)。非日常的対応を取ることで加害者自身が大変なことをしたと自覚する。

終章 いじめから子どもを本気で守るための措置

寝屋川市では2019年いじめゼロへの新アプローチとして教育委員会から独立していじめ調査などを行う部署「監査課」を設置し、いじめ相談のチラシを配布。3年間で民事だけで513件のいじめすべてについていじめ行為を停止させ、全件でいじめの終結を確認したと報告している。寝屋川市は「監査課」設置だけでなく、法的アプローチも導入し、弁護士費用や転校費用を支援している。

おわりに

空気って変わっていくんだという体験を子どもも大人もすること、これこそが教育の場で一番大切なこと。