歌舞伎の百句 -私の芝居歳時記- 藤巻透

昭和57年5月20日発行

 

目次

歌舞伎の俳句

或る会話-俳人中村吉右衛門

役者を詠む-久保田万太郎句集より-

猿翁の思い出

私の芝居歳時記

あとがき

 

歌舞伎の俳句

 羽子板の重きがうれし突かで立つ 長谷川かな女

 初芝居見て来て曠着いまだ脱がず 子規

 花衣脱ぎもかへずに芝居かな   虚子

 義士祭の酒浴びし墓一基あり   三多男

 菜の花にをとこが恋のものぐるひ きくの

 稲妻やきのふは東けふは西    其角

 彩をもて女は鎧ふ近松忌     佑三

或る会話

 雪の日や雪のせりふをくちずさむ 初代中村吉右衛門

 汗の顔見合わせたるも君と我

 雪のふる芝居かなしく美しく

 菊を前恭しくも思はるる

役者を詠む

 おもかげをしのぶ六日のあやめかな

 風鈴のつひにかなしき音をつたへ

 親の名を継げけり草の芳ばしき

 何ごとも承知で言わず春の雲

 閉ぢし目をおりおりあけてあたたかや

猿翁の思いで

 七草や鏡台前に爪を切る

 うららかや光源氏の講義聞く

 大晦日今年の役のあれこれと

 翁の文字まだ身にそはず衣かへ

私の芝居歳時記

 歌舞伎十八番『鳴神』 天へ怒る破戒の僧に大雷雨

 『かっぽれ』     かっぽれの果ては哀れや夏の月

 『義経千本桜』の維盛 月昇り過ぎし栄華を忘れよと

 『義経千本桜』の権太 誰を呼ぶ一文笛や秋の風

 『義経千本桜』の子供達 椎の実を数へ父待つ夕まぐれ

 『細川ガラシャ夫人』 ロザリオの影なき光聖夜待つ

 『人情噺文七元結』  極月や女将の鬢の艶やかに

 『菅原伝授手習鑑』  百年を待ち兼ねて今日冬晴れに

 

こんな本もあったんですね。歌舞伎はまだまだ未開拓の分野の一つなので、いろいろな角度からこれから観ていきたいと思います。