鳴門秘帖(三) 吉川英治

1989年9月11日第1刷発行 2018年3月27日第27刷発行

 

裏表紙「弦之丞を恋するお綱、お綱を追うお十夜。弦之丞はお千絵を想い、お千絵は旅川周馬に迫られる。恋と剣のまんじ巴は、木曽から鳴門の汐路へとつづく。阿波藩を動かす竹屋三位卿は、弦之丞の前に立ちはだかる強敵であり、剣山の間者牢に年久しくつながれる甲賀世阿弥の死命をあずかる非情の人でもあった。いま、山頂の牢を前にして、幕府方、勤王派の最後の死闘が繰り広げられる。」

 

弦之丞とお綱は商船に便乗して阿波へと向かう。弦之丞らを捕らえようと竹屋三位卿はつづらを剣で突かせるが、その中で息絶えていたのは身代わりになったお米と宅助だった。船の中で弦之丞とお綱は周馬と孫兵衛から襲われた。同時に嵐にも襲われ海の藻屑となった。と思われたが、危機一髪助かる。阿波へたどり着いた弦之丞とお綱は、遍路に身をやつし、剣山の牢に幽閉された世阿弥の元へと向かう。一方、世阿弥を殺しに来た孫兵衛を見て世阿弥は孫兵衛の秘密を明らかにする。そこへの弦之丞が現れるが、孫兵衛に世阿弥を斬り付けられる。暗闇の中で孫兵衛に駆け寄るお綱に鳴門秘帖を託す。一瞬の隙をついてそれを奪い逃げ去った一角をお綱が追うが一角は命を落とす。秘帖はどこへ?実は一角の死骸から奪った孫兵衛から盗み取った周馬が懐に忍ばせていた。周馬は、駿田台の隠密として密命を受けていた。弦之丞の前に突如現れた龍耳老人が短銃を放つ。お綱は弦之丞を助けようとするもお綱も撃たれる。が急所を外れていたために二人とも一命を取り留める。傍にあった具足櫃をあけると二人分の旅支度が揃えてあった。老人は阿波守では倒幕できない、むしろ弦之丞の命を救うことこそ阿波一国を救うことができると信じていた。竹屋三位卿と孫兵衛は周馬を追う。弦之丞とお綱も周馬を追う。周馬は渦潮の海峡を難なく渡る秘密を突き止めていた。そこへ周馬めがけて獲縄が投げ込まれた。万吉だった。が綱を断ち切り周馬は逃げおおせた。

周馬の仲間が屋敷からお千絵を騙して連れ出し周馬に引き渡す。そこへ弦之丞が現れ、遂に周馬は斬られて絶命。が周馬の死骸に秘帖がない。そこに三位卿が現れ落ちていた秘帖を拾うも万吉が直ぐに奪う。短銃で撃たれた傷が癒えぬ弦之丞も三位卿やら孫兵衛やら刺客に付け狙われ絶対絶命のところに現れたのが常木鴻山。公儀の発動を宣言し、命運尽きた三位卿は自害し孫兵衛は討ち取られた。そこに侏儒が現れ頭巾を脱がすと額に十字架の傷が痕になっていた。秘帖は弦之丞により二つに破り裂かれた。半分を侏儒通じて老人へ、残り半分を鴻山へ渡す。最後に弦之丞はお千絵とお綱に姉妹仲良く暮らせと言って立ち去ろうとしたところでお綱は御用となる。が松平の力により釈放され二人の幼い弟妹と暮らし、弦之丞はお千絵と仲良く暮らしたとさ(了)。

 

小気味良い文体、ストーリー展開のアップダウンの凄まじさ。本当にすごい小説でした。

これこれ、昭和初期の大衆文学の記念碑的作品!(解説の磯貝勝太郎