新装版 鬼平犯科帳(五)2⃣ 池波正太郎

2006年10月25日第1刷発行

 

表紙裏「横なぐりに脇差をたたきつけてきた。かわしきれず左肩を切り裂かれた平蔵。『鬼平。お前もこれまでだ』闇の底から、綱切の甚五郎の声が聞こえた。…鬼平の危機せまるスリルを描く『兇賊』をはじめ、『深川・千鳥橋』『乞食坊主』『おしゃべり源八』『女賊』『山吹屋お勝』『鈍牛』の七篇。」

 

女賊(後編)

 井筒屋徳右衛門は死ぬ半年ほど前にお千代を女房に迎えた。お千代は大坂屋の間取り図を作り、孝太郎の始末を手下定六に頼む。定六を見つけたおまさが平蔵と彦十と一緒に定六をつけていく。定六と3人の浪人が幸太郎が押し込められている物置小屋に入ると、平蔵が浪人を切り捨てる。孝太郎には大坂屋に戻っても幸せになれぬだろうから、実の父親に会いに行けと進める。後日、平蔵は宿屋川口屋によると、孝太郎父子が一緒に暮らしていた。小兵衛は平蔵に向って両手を合わせて拝み続けていた。

 

おしゃべり源八

 同心久保田源八は文造に棍棒で頭を殴られ気絶し、気がつくと記憶喪失となっていた。源八は盗賊天神谷の手がかりをつかむため探索中に姿を消してしまい、中目黒の百姓家で偶然発見されたが、平蔵を見ても妻を見ても過去のことは一切思い出さなかった。源八は平塚の米屋に結び文を届けるよう託したのだったが、米屋でそれを受け取った番頭の梅次郎が天神谷の一味だったため、道理で届かなかったわけだった。源八が被っていた笠にあったつるやを手がかりに粂八が茶店つるやを発見し、その近くで梅次郎を発見したことから梅次郎が入って行った川崎宿の大崎屋へ打ち込みをかけて天神谷一味を捕縛することに成功した。源八は記憶は戻らなかったが、以前とは比べ物にならぬくらい饒舌になっていた。

 

兇賊(前編)                                                                                                 

 独り働きの盗賊・鷺原の九平は表向き居酒屋の亭主をしていた。そこへ名物芋酒を飲みに来た平蔵だった。帰り道、平蔵を待ち伏せした侍一人を平蔵は斬り殺し、遺体を調べるために運ばせた。江戸で残忍が事件が続いている。網元の甚五郎の仕業ではないかと疑われた。九平はかつて世話になった吉右衛門の家に隠れた。九平は吉右衛門の店で、平蔵殺しの謀議をしていた男の顔を見た。男の跡を九平はつけた。百姓の家に入ったため不審を抱いた。甚五郎の盗人宿の一つで野尻の虎三の家だった。別の日にこの家から出て来た男文挟の友吉も謀議の場にいた一人だった。この男の跡もつけた。向島の料亭大村に入って行った。ある日旗本・最上監物から書状を受け取った平蔵は料亭大村に出かけた。書状を届けた山本が戻った先もまた料亭大村だった。それも見ていた九平だった。