糸車 2⃣ 宇江佐真理

2016年8月31日第1刷発行

 

疑惑

紋弥を源氏名とする勇馬は手入れの前に逃げていた。町田がお絹の家にいないか探った。長吉に相談すると、町田が蝦夷地の近藤とつるんでいる可能性が出て来た。その夜、勇馬がお絹を訪ねてきた。着物を着た町娘の出で立ちだったが、まぎれもなく勇馬だった。勇馬から、村上が市次郎の背中を斬り、止めを刺したことを聞いた。一時、勇馬を匿うことにした。長吉がお絹を訪ねて、お絹の家捜しを明朝すると伝え、長吉とおいねに匿われようとした矢先、近藤と村上が初音屋で待ち伏せをしていた。そこに持田が駆けつけ、村上が刀を振り下ろしたが、持田は十手で応戦する。持田はお絹と勇馬を預かることにする。

 

秋明菊

お絹の年下の友人のお君は妹のような存在だった。そのお君に縁談話があるという。無口な料理人だが、そのことでお絹に相談したいと、居酒屋でお君の話を聞くことに。持田の屋敷で世話になっている勇馬は、詫び状を書いて藩に忠誠を誓って藩に戻ることを考えているという。もっとも日野家は既に養子を迎えているので、しかるべき家に養子に出すしかないので後日相談したいと持田から聞かされた。お君からは、かつて役者に惚れたことがあるとのことだった。お絹は過去のことはすっぱり忘れて前だけ見詰めていけばいいと助言する。店の中で、秋明菊のことが話題になる。秋明菊には、秋牡丹、しめ菊、紫衣菊、加賀菊、越前菊等々、沢山の名前がある。お君もかつてはいろんな名前を使っていた。持田から家に来るよう呼ばれた。近藤も現れた。勇馬の養子先は馬廻りの遠山殿だとのことだった。遠山殿に娘がいて祝言をあげたいとも。しかしお絹は10歳も年上の娘を娶れと言われて断った。近藤は気分を害して帰ってしまう。見かねた持田は勇馬を自らの養子に迎えたいと言い出した。お君が心中して死んでしまった。役者の為吉が未練がましくお君を手に掛け、為吉は死にきれなかったと持田から聞いた。

 

糸車

勇馬から養子縁組した後、持田からの話をお絹が断ったら、自分が養子のままでいるのが辛い、もっと他に皆が幸せになる方法がないか考えているとの話がお絹にあった。勇馬は、藩が国替えするという話があるとのことだった。勇馬は、寄合家老の息子と遺封先の藩に戻るか相談していた。お絹はどうするのがよいか解決の糸口が見えなくなった。お絹は辻占いに占ってもらった。勇馬が奥州の柳川への移封が決まった。持田と勇馬が喧嘩したことを聞いてお絹は複雑だった。持田にお絹は勇馬が母親の手を離れたら持田のことを考えたいと伝えたが、持田は忘れてくだされというが、お絹は手紙を書き続けるという。持田は最後にいつまでもお待ちしておりますと言って別れた。5年、10年と時が経過した。手紙をしたためたが、音信が途絶えた。勇馬は家老の娘と祝言をあげた。持田は病で亡くなっていた。お絹は糸車を回していた。様々なことを思い出していた。