夏姫春秋 下 宮城谷昌光

1995年9月15日第1刷発行 2019年5月8日第44刷発行

 

裏表紙「覇権を奪いあう諸王たちの中から、楚の荘王が傑出してきた。夏姫を手中にして逡巡した楚王は、賢臣巫臣に彼女を委ね、運命の2人が出会った。興亡激しい乱世に、静かに時機を待った巫臣は、傾国の美女を、驚くべき秘密からついに解き放ち、新しい天地に伴うのであった。気品にみちた、長編歴史小説。全二巻。」

 

夏姫は家宰を救うために儀行父と孔寧に身を預けた。子南の入学も孔寧の陰助で許された。夏姫は陳公・平国にも身を捧げた。陳公は夏姫のために高楼を建築した。子南の苦悩は深かった。洩冶(せつや)は命がけで陳公に諫言した。洩冶は孔寧に斬殺された。ある時、陳公・孔寧・儀行父の三人の酒席の場で、徴舒が汝に似ていると言い合う声が子南に聞こえた。胸中に電光が入り心が引き裂かれた子南は、陳公を殺害し、二人の大臣は逃げ去った。子南は謀臣季暢の意見を入れて楚と結ぼうとしたが奏功しなかった。夏姫は季暢に子南を誤らせた非をなじったが、季暢は夏姫にそもそもの誤りは夏姫がこの世にお生れになったことだと言った。この言葉は夏姫の胸をえぐった。楚王は、子南の乱で楚に逃げ込んだ儀行父から、夏姫は風を湧かすと聞いた。体内に風伯を宿しているのであれば、夏姫を得て子南を殺すと決めた。子南は殺された。楚王は陳国を廃した。夏姫は孔寧を楚に連れて行った。夏姫の風伯が楚にとって吉なのか凶なのか分かなかった。楚王は申叔時から諫められて陳国を返した。楚王が夏姫に触れても風は吹かなかった。楚王は巫臣に夏姫に風が吹くか確認させると風は吹いたが、巫臣は凶と告げた。楚王は夏姫を連尹(弓矢の管理職)の襄老に与えた。邪を清めるためだった。巫臣は夏姫を幸せに出来る男は自分しかないと直感した。連尹は晋との戦いで戦死した。息子の黒要は夏姫をものにした。巫臣の心は再び夏姫の影をひきずった。楚王が薨去した。巫臣は斉に行くよう命じられ、途中で鄭に寄った。鄭公に謁見し巫臣は夏姫との結婚の許しを得た。二人は晋へ遁走した。巫臣は晋で廃邑同然の邢の邑を与えられ、見事に再興させた。