2005年1月15日第1刷発行
はじめに
開化人・中村祐興
大胆不敵な青春期
人生探求の旅へ
天風哲学の確立
中村天風の世界
対談:天風哲学の真髄と人間天風(内海倫・合田周平)
・天風の説く「心身統一法」は、健全な精神と身体を確保するために、自然界の森羅万象をつかさどる活力(エネルギー)を自らの心身に導入する画期的なシステムである。天風は少年期に頭山満に預けられ玄洋社で暮らしたことがある。頭山は西郷隆盛の「敬天愛人」を受け継ぎ、志をもった当時の若者の精神的支柱だった。頭山は天風にとり師であり父であった。30歳の頃、結核と診断され、いかに生きるべきかという命題を突き付けられ、牧師に教えを求め、ベルグソンを始めとして哲学の書などを読み漁った。マーデン『如何にして希望を達す可きか』を読み、アメリカに渡り、コロンビア大学、ロンドン、フランスで学び、カントの伝記を勧められ、物理学者プランクの思想に触れた後、エジプト・カイロ、ヒマラヤで瞑想する中で、自然と一体となって生きている自分の命を感じた時、自分はその大自然の力そのものだと力強く実感した。その時のほとばしる心の叫びを次のようにあらわした。
「私は力だ 力の結晶だ 何ものにも打克つ力の結晶だ
だから何ものにも負けないのだ 病にも運命にも…
否あらゆるすべてのものに打克つ力だ そうだ 強い強い力の結晶だ」
上海を経由して帰国した後、統一哲医学学会を設立し、多数の講演活動を開始した。東郷平八郎、山本英輔らが天風に学んだ。天風に師事した人々として、双葉山、広岡達朗、宇野千代、稲盛和夫らがいる。天風は天風哲学は宗教ではないと言っていた。恐らくそれは出発点の発想に違いがあるからだと思われる。もっとも決して宗教を否定しているわけではない。