宮城谷昌光対談集 縦横無尽の人間力 平岩外四、丹羽宇一郎、南場智子、江夏豊、平勢隆郎、井波律子、縄田一男、吉川晃司、原田維夫、津崎史、秋山駿×宮城谷昌光

2022年4月25日初版発行

 

帯封「組織論からビジネスの極意、人の能力や生き方の美しさまで中国歴史小説の第一人者が歴史から『何をどう学ぶか』を語りあう」『人としてどのように生きるか、人の心をどう動かすか』」

 

目次

一 歴史に学ぶ

平岩外四 リーダーの決断                

丹羽宇一郎 上司の力を知りたければ、部下を見よ

南場智子 人が育つ組織とは

江夏豊 名将の条件

二 歴史を楽しむ

平勢隆郎 春秋戦国について

井波律子 『孟嘗君』と春秋戦国時代

縄田一男 范雎への思い

吉川晃司 『三国志』のおもしろさ

三 歴史の周辺

原田維夫 中国史を描き続けて

津崎史 甲骨文字を辿り、古代人と対話する(司会 加賀美幸子

秋山駿 人間の真形

 

平岩外四 76年東京電力社長、84年会長に就任。90年から経団連会長。

宮城谷 書物から出てくる言葉というのは、冷凍された、冷えきったものです。ところが人と人が話しているときには、その言葉が体温を伴って相手に伝わる。それが一番重要なのではないか。

宮城谷 いまの企業のトップの方に申し上げたいのは、言葉を道具と勘違いなさっている方がいるのではないかということです。言葉に対して敬意を持ってもらうこと一つだけでも、企業の倫理を正していけるのではないか、というのが私の考え方です。

平岩 藤沢さんの作品の中で一番好きなのは『三屋清左衛門残日録』。

宮城谷 私もです。最高傑作なのではないかと思っています。

 

丹羽宇一郎 98年伊藤忠商事社長、04年会長。10年民間出身で初の駐日大使就任。

丹羽 お金で買えないものは人間の社会に一つしかない。それが信頼、信用です。

 

南場智子 DeNA創業者、代表取締役会長。

宮城谷 (自分で好きな作品はどれか?との質問に)『花の歳月』という短篇集です。

宮城谷 声と手紙などの文字で相手の本質はだいたい分かる。声には明瞭さやパワーが出るので、あまり本質から外れない。

 

江夏豊 プロ2年目でシーズン4百奪三振記録を樹立。両リーグMVP受賞。

宮城谷 『中庸』が初めて「誠」という字を際立たせた書物で、たしか「誠者天之道也、誠之者人之道也」(誠は天の道なり、之を誠にするは人の道なり)と書いてあった。江戸時代において「まこと」という意で使う字は、「信」でした。『里見八犬伝』の「信」です。でも、新撰組はそれを拒否して、「誠」を使った。改革の意思の表われだったのではないかと思っています。

 

平勢隆郎 東京大学名誉教授。中国古代史料を様々な角度から検討。

両者の対談はかなりマニアックで、読んでも、残念ながらピンと来ない。

 

井波律子 専門は中国文学。国際日本文化研究センター教授等を歴任。

宮城谷 寡兵でもって衆を破るというのが、基本的に日本人は好き。日本というのは中小企業が非常に多い国ですから、そういう土壌があるのかもしれない。奇襲とか急襲とかいうものが非常に好きな国民。おまけに面で攻めずに点で攻めるという孫子の兵法の延長線上にある。

 

縄田一男 歴史小説に造詣が深く、『時代小説の読みどころ』で中村星湖文学賞を、『捕物帳の系譜』で大衆文学研究賞を受賞。

宮城谷 なぜ范雎がこれだけ見向きもされなかったのかというと、日本人にとってわかりにくいと思われる要因が范雎には多分にある。きちんと恨みを晴らしてしまったからということもあるかもしれない。

 

吉川晃司

宮城谷 日本で今まで正史にもとづいて三国の物語が書かれたことはありませんでしたから、「そろそろ自分が書かなければ」と思って始めたのがこの『三国志』です。

 

原田維夫(つなお) 版画家

原田 「宮城谷さん、城って木の実がいっぱい落ちていますが、なんでなんですかね」と聞いたら、「籠城したときに食料になるからですよ」と(教えられた)。

津崎史×加賀美幸子 中学・高校教師、NHKアナウンサー

津崎 (父は)百十歳を過ぎてからが老後だと言っておりました。

宮城谷 『詩経』は、民衆の苦しみがはっきりとわかる重要な書物です。白川家の応接間には「念ずれば花開く」という色紙がありました。一生懸命そのことを思って努力すれば、やがて開花する時がくる。

津崎 父の言葉で印象に残っているのは「人は山でも動かせる。ちょっとずつ、ちょっとずつつづければ、山でも動かせる」です。

 

秋山駿 文芸評論家

宮城谷 小林秀雄の言葉のなかで、「一つの言葉さえ現実の事件である」という言葉は一生、自分のなかで消えないと思う。だから、本を読むにしても、自分が作品を書くにしても、絶対、真剣勝負でなければならない。私は、そうやって本を読んできた。