2014年5月15日第1刷発行
目次
ロングインタビュー 私の「歴史小説」
自作解説
『三国志』の沃野に挑む
『三国志』の可能性
『三国志』歴史に何を学ぶのか
対談 歴史小説を語る
水上勉 歴史と小説が出会うところ
宮部みゆき 「言葉」の生まれる場所
吉川晃司 我々が中国史に辿り着くまで
五木寛之 乱世を生きるということ
講義&対談 中国古代史の魅力
中国古代史入門
白川静 日本人が忘れたもうひとつの教養
平岩外四 逆風の中の指導者論
秋山駿 春秋時代から戦国時代へ
マイケル・レドモンド 碁盤上に宇宙が見える
項羽と劉邦、激動の時代
『三国志』をより深く楽しむための本
宮城谷昌光中国歴史作品の年代一覧
特別随想 ふりかえること
対談者略歴
宮城谷昌光出版年譜
・曹操の祖父曹騰は有名人なのにどの小説にも書かれていない。祖父は宦官だった。宦官の最高位の大長秋にまで昇った。
・楊震の「四知」という言葉から始めたかった。後ろ盾がなく本当に優秀な人材を集めた、その一人が楊震。彼は総理大臣の地位まで昇り詰める。これが宦官と官僚との対立の起点となった。三国時代の扉を開いたのは楊震だと言ってよい。
・曹操と袁紹との違いは人材を求めたか否か。袁紹は荀彧(じゅんいく)を手放し、曹操は手に入れて、劉邦の下に来た張良と比肩する。
・袁術は群雄の中で一番皇帝を大事にする人だと見られていた。但しそれはポーズだった。
・実は中国に一度も行っていないと打ち上げると、(水上は)資料で空想の羽が広がるところを取材すると剪定しちゃうところがあるからねと受け答えしている箇所に驚いた。
・時代小説の全盛期、山本周五郎、吉川英治、海音寺潮五郎がいたというのは唐詩の時代、今は宋詩の時代に入っていて、それは司馬遼太郎と藤沢周平の2人によってなし遂げられた。2人は小説を内部から明るくする光の質が違う。
・吉川英治、北方謙三、伴野朗、安能勉、羅漢中の『三国志演義』、韓国版のもの、正史『三国志』まで20種類位は読んだという吉川に対し、『太平御覧』『資治通鑑』『水経注』を勧める。上洛は洛陽を京都に置き換えているところから来ており、中国から借りている。
・諭吉は『春秋左氏伝』全15巻を11回読んだ。そうした基盤の上に立って次に何が必要かを見据えている。
三国志と関係ない話も結構あるけれど、それとは関係なしに、最後までスーと読める。三国志に関心ある人は三国志に言及した箇所だけ読んでも十分入門編になると思う。