夕映え天子〈上〉 浅田次郎

2019年11月20日発行

 

夕映え天使

老いた父親を抱えながらほそぼそと経営している中華料理屋「昭和軒」で40歳前後の中年女性が食事を済ませると、突然、住み込みでここで働かせてほしいと言い出した。店主はあわよくば妻にしたいと考えて応じ、看板娘として評判になったが、半年で姿を消してしまった。正月が明けると、軽井沢の警察から女性の死体について問い合わせを受ける。死体の確認に駆けつけると、関西からやってきた強面のうどん屋の男も呼ばれていた。女は昭和軒を出た後、関西のうどん屋で雇われていた。警察の説明によると、彼女は山中で首吊り自殺し腐乱していた。マッチ箱と名刺以外、特定につながる所持品を持っておらず、二人にだけ連絡して欲しいとの意味のようだった。警察は、悪い人じゃなかったと言いながら、天使みたいな人だったんじゃないかと。警察からの帰り道、自転車に乗った二人は思い出話から店主は泣いた。

 

切符

両親が離婚し、祖父と二人で暮らす少年は、父も再婚し、母も再婚したことを聞いていた。夏休みの終わりに1日だけ母と遊園地で過ごした。帰りに改札で母と別れる時、切符の裏に母が電話番号を書いてお小遣いと一緒に渡してくれた。日付けが刻印された切符は一生の記念日になるだろうと思う。しかし祖父を裏切ることはできないと思い、電話しなかった。

 

特別な一日

超巨大高速彗星の衝突が予想されて3年。人類の尊厳を合言葉に今日を迎えた。SFか。

 

浅田次郎の短編集は好みが分かれるところだろうと思う。浅田次郎の歴史ものは好きだが、短編はどうも苦手かな。